ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

今夏から秋におけるプレミアムカードの動向 3/3    

ポイ探の菊地崇仁氏が、エンリッチ読者のライフスタイルにマッチするクレジットカード、あるいはポイントサービスの付加価値を見出す本連載。9月最後は、キャッシュレス決済関連と給与デジタル払いのニュースについて紹介する。(1/3から読む)−−−

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拡大する特定店舗でのポイント優遇

現在は、三井住友カードが大手コンビニでポイント還元率を大幅にアップするなど、特定店舗でのポイント優遇のサービスが広がっています。少額決済でも構わず、ユーザーにとってもメリットを見いだせる取り組みです。

こうしたなか、8月から最大5.5%のポイント優遇対象店を拡大したのが、三菱UFJカードです。今までも同カードの個人会員を対象にローソンやセブン-イレブンなどで1か月の利用金額合計1000円ごとに1ポイントの基本ポイントの加え10ポイントのスペシャルポイントを付与していましたが、回転すしの「くら寿司」「スシロー」、スーパーマーケットの「オーケー」「オオゼキ」「三和」「フードワン」などが新たに追加されました。以前は単身者向けの店舗が目立ったのが、今回はファミリー世帯が使うようなお店がラインナップに加わっています。

さらに、三菱UFJカードの一般カードの年会費1375円(税込)を、2024年8月1日入会分より永年無料にすることも発表。既存一般カード会員の年会費も永年無料への改定を予定しているといいます。一般的にカード会社が発行するプロパーカードは一般クラスであっても年会費は有料のケースが多いのですが、近年は三井住友カードやJCBが一部カードを無料にするといった施策も始まっています。三菱UFJカードも会員を獲得すべく、こういった施策を強化したのだと思います。何より、同カードの場合、カードやタッチなど決済手段に関係なくポイント優遇が適用されるのがメリットです。

大丸松坂屋カードでも9月から来年2月までローソンやセブンイレブン、マクドナルド、ガスト、ステーキガスト、マツモトキヨシ、ココカラファインでQIRAポイントが5%貯まるサービスを開始するなど、特定加盟店でのポイント還元競争はまだまだ続きそうです。

PayPayが給与デジタル払いを年内に開始

ここ数年は官民が一体となり「キャッシュレス決済」を推進してきましたが、いよいよ給与の「受け取り」もデジタル化します。PayPayは8月9日、給与デジタル払いに対応する資金移動業者として厚生労働大臣の指定を受けたと発表。2024年内に全ユーザーを対象に「PayPay給与受取」を提供するそうです。

給与デジタル払いとは、事業者(雇用主)が給与の一部を電子マネーで支払うというもの。対応する事業者で働く従業員は、給与を金融機関口座や現金で受け取ることに加え、PayPayアカウントでもPayPayマネー残高(PayPayマネー(給与))として給与を受け取れるようになります。

ただし、雇用主・従業員が一方的に始めることはできません。従業員は勤務先が給与デジタル払いに対応するために必要な労使協定の締結がされているかを確認し、雇用主へ同意を申請する必要があります。そのうえでPayPayアプリから「PayPay給与受取」を申し込むとPayPayアカウントに給与を受け取るための「給与受取口座」と、受け取った給与をPayPay残高として保有する「PayPayマネーアカウント(給与受取)」および銀行振込による「PayPayマネーアカウント(給与受取)」にチャージするための「給与受取口座への入金用口座番号(銀行口座番号)」が設定。従業員は「給与受取口座への入金用口座番号(銀行口座番号)」を給与振込先として雇用主に伝え、雇用主から給与が銀行に振り込まれると、PayPay残高(PayPayマネー(給与)として、「PayPayマネーアカウント(給与受取)」にチャージされます。

給与全額がデジタル化するわけでもありません。PayPayマネー(給与)の残高上限額は20万円までと定められています。新たに受け取る給与が残高上限額を超える場合は、従業員があらかじめ定めた本人名義の金融機関口座(自動送金先口座)へPayPayから手数料無料で送金される仕組み。「PayPay給与受取」を利用する従業員のPayPayマネーの残高上限額は80万円で、PayPayマネーとPayPayマネー(給与)の合計で上限は100万円となっています。

また、給与として受け取ったPayPayマネー(給与)は、受け取り直後から本人名義の金融機関口座へ送金が可能で、送金先がPayPay銀行の場合は送金手数料無料。それ以外の場合は100円の送金手数料がかかります。ただし、初回は無料です。

同サービスは8月14日より、PayPayをはじめソフトバンク、LINEヤフーなどのソフトバンクグループ10社の従業員を対象に提供をはじめ、希望する従業員を対象に、2024年9月分の給与からPayPayアカウントへの給与支払いを始めます。

給与デジタル払いは2022年に厚生労働省から公布がなされており、新たな給与支払いの手段として注目を集めてきました。会社側が強制的に導入するのではといった懸念もありましたが、今回のサービスは労使間の同意がないと利用できず、そういった心配はなさそうです。

ただし、PayPayのヘビーユーザーにとってはともかく、それ以外の人はそれほど恩恵を受けるかわかりません。どこまでユーザーが伸びるか見守りたいと思います。私個人としては、サラリーのある従業員というよりは、銀行口座を持ちにくい外国人労働者や、日給が発生する仕事に従事しているなど、それほど大きくない金額を手軽に受け取りたい人に向いたサービスだと考えており、こういった領域から普及していくのではないでしょうか。

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菊地 崇仁 (きくち たかひと)

株式会社ポイ探 代表取締役。大学卒業後、日本電信電話株式会社(現NTT東日本)入社。システム開発に携わる。2002年の同社を退社後、友人と共に起業。ポイント交換案内サービス・ポイ探の開発に携わり、2011年代表取締役に就任。現在All About、カカクコム、ECZine、日経トレンディネットへ記事を提供する他、テレビ・雑誌でも活躍中。著書に「新かんたんポイント&カード生活 (自由国民社)」、「できるAmazonスタート→活用 完全ガイド(インプレス)」他。

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