あらゆる分野にビジネスチャンスが訪れる
これは、機械と人間の関係におけるちょっとした革命である。今まで人間は、機械の操作性を向上させるために様々な努力を行ってきたが、その結果はあまり褒められたものではなかった。コンピュータがよい例だが、登場から半世紀以上経過しているにもかかわらず、いまだにメインの入力機器はキーボードである。
だがこうした状況も、人工知能の普及によって大きく変わろうとしている。機械は今後、徐々に、操作しなてくもよいものに変化していくことになる。しかもこうした新しい世界は思いのほか早く到来する可能性が高い。
機械と人間の関係が変わることによるビジネス上のインパクトは極めて大きなものとなるだろう。
例えば音楽コンテンツというものを考えてみよう。人工知能社会では、自分がもっとも好むように作詞・作曲・レコーディングされた曲が、デバイスを通じて勝手に提供されてくることになるかもしれない。既存のサービスの中には、すでにそうした片鱗が見えている。
権利上の問題で、日本では残念ながらサービスを提供していないのだが、定額制音楽配信では断トツの世界トップであるSpotifyというサービスがある。Spotifyは、月額固定料金もしくは無料(広告が入る)で音楽が聞き放題という画期的なサービスで、この中にラジオと呼ばれる機能がある。
これは曲の試聴履歴などから、利用者が好きそうな曲を勝手に選曲してくるという、一種の人工知能的なサービスだが、この精度が驚くほど高いのである。始めて体験した人は「ここまで自分の好みを理解するのか」とびっくりする。だが、実際はその逆で、私たちが考えている程、人間の思考は複雑ではないのだ。
作曲の自動化などに至っては、かなり以前からすでに実用レベルである。その人の好みを分析し、自動的に作詞作曲アレンジを行い、音源を組み合わせて作品にするという作業は、それほど難易度が高いものではない。
これはコンテンツ分野における一つの例でしかないが、こうした変化があらゆる業界で発生してくることになる。ひょっとすると、人類が経験した中でも最大規模のビジネス・イノベーションになるかもしれない。