ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

トップコンサルタントに聞く
中小・中堅企業のM&A(前編)

――具体的には、どういった規模の企業が売り手・買い手になっていますか。

渡部 売主で多いのは、売上規模が年2億~20億円、なかには100億、200億円規模もあります。他方、買い手の半分は上場企業で、同業もあれば異業種など多岐に渡ります。

エンリッチ M&A 2

私が担当した成約案件には、全国に150店舗を構える居酒屋チェーンが新潟県の酒蔵会社を買収したというケースがありました。それまでは大手酒造会社からのお酒を納入していましたが、高品質のお酒を造る酒蔵を買収して、仕入れを一本化したのです。日本酒市場の売上はここ20年間で半減しましたが、酒造会社からすると親会社に納品することで売上が確保でき、親会社も新潟の有名な地酒が置いてあるということで評判が立ち、両者にとって多大なメリットが見いだせました。日本酒は多く造り売れると億単位の売上になりますが、減ると一気に赤字に転落するというビジネス構造で、この酒蔵会社も2年前から経営難といった状況でしたが、このM&Aにより業績はV字回復しています。

ですから、同業同士で規模拡大を図ることもあれば、異業種・間接的な業種であっても効果的なM&Aを実現し、両者にとって発展の道を見いだすこともあります。そして、こういった友好的なM&Aをサポートするのが、我々の務めです。

 
ーー後継者不足に悩む、国内中小・中堅企業。大事に育ててきたからこそ発展・成長のために友好的M&Aを選ぶ経営者が増えている。対して、自社のビジネス拡大を目指す者にとっても、売り手の出現はまたとないチャンス。いま、日本経済はこういった局面を迎えているのだ。これをうまく活用しない手はないだろう。そこで気になるのはM&Aに至るまでのプロセスだが、次回はこの点を押さえていきたい。


渡部 恒郎(わたなべ・つねお)
株式会社日本M&Aセンター 業界再編支援室長

京都大学経済学部在学中にベンチャー企業の経営に参画。卒業後、2008年日本M&Aセンター入社。過去70件を超えるM&Aを成約に導き、中小・中堅企業M&AのNo.1コンサルタントとして業界を牽引している。テレビ朝日「報道ステーション」。テレビ東京系列「ワールドビジネスサテライト」・「ガイアの夜明け」、各種新聞など、複数のマスメディアで取り上げられている。


▼渡部 恒郎著
『「業界再編時代」のM&A戦略 ~№1コンサルタントが導く「勝者の選択」』
幻冬舎メディアコンサルティング 1,400円(税別)
渡部氏 著書


TEXT:大正谷成晴

エンリッチ編集部

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