誰と誰が競合になっているのか?
アマゾンは本業がネット通販会社なので、当然、この部分では楽天と競合することになる。電子書籍についても同様で、アマゾンはキンドルを、楽天はKoboを提供しており、両社は競合関係にある。またアマゾンは音楽配信会社でもあるので、この分野においてはアップルやグーグルがライバルになる。
アマゾン、アップル、グーグルの3社は、細かい使用は異なるものの、テレビに接続して動画などを楽しめるハードウェア製品を出している。家電製品という部分でもやはり3社は競合である。
これまで音楽配信といえばアップルだったが、グーグルは最近、この分野に非常に力を入れてきており、今年9月には、月額制の音楽聴き放題サービス「グーグルプレイミュージック」の提供を開始した。月額980円を払えば、何と3500万曲が聴き放題となる。
こうした聴き放題サービスは、世界ではSpotifyというサービスがリードしているが、日本国内では権利関係の整理が付いておらず、サービスが開始できない状態にある。また国内の事業者では、エイベックスグループのAWAなど、いくつかのサービスが立ち上がっているが、曲数ではグーグルのサービスに軍配が上がる(聞きたい曲の有無にも大きく左右されるが)。
またグーグルは利用者が持つ楽曲5万曲までを無料でクラウドで保存管理するサービスも付属しており、多くの楽曲ライブラリを持つ人にとってはさらに魅力的な存在となっている。
これまで各社は、それぞれのサービス内容を拡充することで利用者の獲得を進めてきた。アマゾンとグーグルを比較した場合、音楽配信に限って言えば、グーグルの方がはるかに魅力的であり、単純な競争ルールではグーグルのシェアが拡大することになる。
しかし、アマゾンのプライム会員であれば、音楽や動画サービスが無料で使うことができ、しかも1時間の配送サービスも使うことができる。こうなってくると状況は変わってくる。音楽配信単体のサービスでは負けていても、総合力でアマゾンのサービスを利用するという人が増えてくる可能性があるのだ。
これはアマゾンと楽天との競争にも当てはめることができる。アマゾンの有料会員限定のサービスに翌日配送というものがあるのだが、年間3900円という会費がネックになり、利用に踏み切れなかった人も多かった。だが、音楽の聴き放題や動画の見放題サービスが付いてきて、さらに追加料金を払えば1時間配送も可能になるとしたらどうだろうか?利用者における事業者の選定基準はやはり変化してくるかもしれない。
アマゾンによる一連の取り組みは、単体のサービスレベル競争から、総合力での競争に業界全体をシフトさせる可能性がある。今後は各社が、付加サービスを充実させ、全体で利益を得るようなやり方を模索し始めるかもしれない。事業者側にとっては、体力勝負であり、ビジネス環境がますます厳しくなることを意味している。
こうした総合力勝負のレースは、消費者にとってはメリットが大きいはずだが、サービスを選ぶ基準はますます分かりにくくなるだろう。自分がどんなサービスを必要としているのかハッキリさせないと、適切なサービスを選択できなくなってしまう。賢く選択しないと消費者として損をする時代が始まっているのかもしれない。