国際的にも低い日本の労働生産性
改善するための手立ては急務
こういった話題になると多くの人は「人口が減っても労働生産性を上げれば問題ない」と反論するが、ここにも大きな課題はある。日本生産性本部が発表した「労働生産性の国際比較2018」によると、OECD(経済協力開発機構)データに基づく17年の日本の時間当たり労働生産性は47.5ドル(4733円/購買力平価換算)で、米国(72.0ドル/7169円)の3分の2程度の水準。順位はOECD加盟36か国中20位という結果だったが、主要先進7か国中では70年以降、最下位の状況だ。
同じく、17年の1人当たりの労働生産性は84.027(837万円)ドルだった。1位はアイルランド、2位はルクセンブルグ、3位は米国で、日本はOECD加盟国中21位という結果。就業者1人当たりでみても、主要先進7か国で最も低い。
ここからわかるのは、日本の労働生産性は70年代からずっと低水準で、改善していないということだ。労働生産性を決める要素は「付加価値」「労働者数」「労働時間」の3点だが、これらを向上させるには「付加価値を上げる」「労働者数を減らす」「労働時間を減らす」を実行するしかない。日本に照らし合わせると人口減で労働者の数は減っていくが、長時間労働が横行し、収入はなかなか上がらないので改善の余地はあるだろう。
例えば労働時間。労働政策研究・研修機構の「データブック国司ア労働比較2018」によると、日本の1人当たり平均年間総実労働時間は、1713時間。アメリカの1783時間よりは短いが、イギリスの1676時間、ドイツの1363時間、フランスの1472時間に比べると長い。
背景にあるのは、残業時間だ。海外では公私がしっかりと切り分けられていて、就業時間を過ぎれば業務を終えるのが当たり前。むしろ、オフィスに長居すると無能のレッテルを張られかねない。平日の終業後、週末のオフ、まとまったバケーションといった時間を大事にしているからこそ、効率的に働こうとする。他方、日本は残業ありきのワークスタイルで、長時間労働が美徳とされる面はいまだ否めない。若手のビジネスパーソンの間にワークライフバランスの意識は根付きつつあるが、経営層をはじめ上司たちは業務が最優先で、定時にオフィスを後にすることをよしとしない環境もあるだろう。
このように、「古くからのビジネス慣習と上役に意見しづらいトップダウン文化が根強い日本のビジネス環境」と「合理的・効率的なオフィス環境でコミュニケーションがフラットな欧米諸国」という構図が、1人当たりGDPや1人当たりの労働生産性といったデータに表れていると解釈することもできる。
そうであるなら、会議のための会議、残業ありきの就業体制など、悪習とわかりつつも放置されている日本独自の非効率なワークスタイルを、ゼロベースから見直すと活路を見出せるのではないだろうか。
TEXT:大正谷成晴