いまも365日、ほぼ1日も休まず
午前3時55分から奉仕活動を継続
引退後の2007年には、自身を癒し続けてくれたクラシック音楽への恩返しとして、若き音楽家を育成するため名古屋市に宗次ホールを設立。若く有能な演奏家にストラディバリというバイオリンの世界的名器を複数保有してそれぞれに貸与したり、予算が少ない中学校などの音楽室や吹奏楽部などの施設に楽器を寄贈し続けている。第6回「青少年に楽器を贈る運動」(2014年)では108校に楽器259点(総額1億円相当)を寄贈。
宗次ホールでは昨年(2015年)、403公演を行い、リーズナブルに音楽に親しんでもらうランチタイムコンサートを含めて宗次氏自らが客を出迎えているという。地元の音楽愛好家はもとより、遠方からも集客する。
「経営で得ることができた利益は、社会に還元するものだと考えています」と、現在では年間を通して雨の日も風の日も休まずに毎朝、有志を募り名古屋市の広小路通り413mの清掃・美化活動を行っている。地下鉄栄町12番出口から東新町交差点まで、季節により路地植えされたパンジーやハイビスカスが咲き誇り、通称イエロー・エンジェル通りとして多くの人たちに喜ばれている。
こうした宗次氏にタイムカード(2016年3月現在)を見せてもらうと、通年で午前3時55分に出勤している。
ファッションなどには一切、金をかけない
取材当日のスーツは1万円台、ネクタイは500円、時計はカシオの7800円だった。経営者時代にはほとんど飲酒しなかったというが、現在、気に入っているのは「スペイン産の1瓶298円のワイン」だという。
このように着る物、時計などの持ち物には一切金をかけず、「私は自他ともに認める変人ですから」とユーモアたっぷりに謙遜、ひたすら社会に貢献する宗次氏はまさに、近代日本の経営者の鏡のような存在だ。
*2016年に好評いただいた回のアンコール掲載です
世界中に約1200店舗を展開する上場企業、カレーハウスCoCo壱番屋 創業者。1948年、石川県生まれ。天涯孤独の身の上で幼少期は孤児院で過ごし、養父母に引き取られるも極貧の少年時代を送った。高校卒業後、不動産販売会社に入社。1973年独立。翌年、不動産仲介業を続けるかたわら名古屋に喫茶店「バッカス」を開業し、さらに夫婦で力を合わせて1978年カレーハウスCoCo壱番屋を創業。1998年に同社会長、2002年に創業者特別顧問に就任。2007年、クラシック音楽専用の宗次ホールをオープン。(株)ライトアップ 代表。NPO法人イエロー・エンジェル 理事長。「日本一の変人経営者」(ダイヤモンド社)をはじめ著作、全国での講演多数。愛妻家としても知られる。
宗次ホール問合せ:ライトアップ
住所:名古屋市中区栄四丁目5番14号(宗次ホール1F)
TEL:(052)261-0355
TEXT: 松田 朗/Akira Matasuda(時計ジャーナリスト)
Pavone、Begin、時Begin、VOCE、FRaU、POPEYE、DIMEといった富裕層向けライフスタイル誌や専門誌、女性誌などにかかわる。各国大使館での文化イベント、『松本零士の宇宙観とクロノグラフ展』なども手掛ける(株)フォーシスターズ代表取締役。東京ニュース通信社特派記者。