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堀紘一の『ヒト・モノ・カネ』論 (3)
お金は不幸を軽くしても、幸福を約束しない。

粋なお金の使い方とは?

さらに、この作品を上演するにあたり協力してくれたのが、友人のひとりで、カプコンの創業者である辻本憲三さんです。じつは、「KAMIKAZE‐神風‐」の製作には多額の費用がかかり、2億円が足りませんでした。そこで企業に協賛金を募ったのですが、辻本さんは個人として協力してくれたのです。その時は「友情のお陰」と心から感謝しました。

堀紘一の『ヒト・モノ・カネ』論 (3) お金は不幸を軽くしても、幸福を約束しない。

ちなみに彼は独特のお金の使い方をする人物で、そのひとつがワイナリー。米カリフォルニア州ナパに土地を購入し、開墾からワインの製造に着手。投じた私財は100億円以上で、2008年に初出荷された白ワイン「あさつゆ」は、2011年に米国の富裕層向け雑誌で最高のワインのひとつとして選ばれたほどです。さらに現在も別に山を購入し、フランスからブドウの苗を取り寄せ、自分の名を冠したワインを作っているようです。この話を聞いたとき「よくやるな」と思うと同時に、賢いお金の使い方だと思いました。というのも、私もそうですが、創業者なんてたいして尊敬されず、いずれその顔も忘れられます。ですが、そういったワインなら後世に残りますから。粋なお金の使い方ではないでしょうか。

評論家・ジャーナリストの田原総一朗さんも旧知の仲。30年前に知り合いましたが、いまではDIの社外取締役を11年も務めてもらっているほど。彼とは、つらい時期も励ましあって、ここまできました。

オリックスの宮内義彦さんも、10歳年上ですが友達と呼べるひとり。家族ぐるみで、私の父、息子と3代にもわたるお付き合いです。そういった縁もあり、私は今季からオリックスバッファローズのオーナー顧問を引き受け、何度も神戸に通っています。宮内さんはオリックスCEOを6月で退任するので、その後はDIの社外取締役になっていただきました。

友は心で作るのもの。だから、長続きする

私がこれまで人生をかけてきたのはビジネスで、それはいまも変わりません。「何をしている時が一番楽しいですか?」と聞かれると、真っ先に思い浮かべるのは仕事のことです。それは私の友達も同じで、宮内さんなんて「よく趣味の欄に音楽鑑賞とかゴルフとか書く人がいるけど、それじゃダメ。仕事と書かないと!」というほどです。

ですが、そんななかでご縁があり、いまも親交のある仲間が、私にとってはお金以上に大事で、むしろお金と比べるのが失礼なほど。こういった存在があるから仕事にも力が入りますし、ともに遊び、学ぶことで自分も成長します。こうした仲間とおいしいものでも食べながら会話することも、私の人生のなかで、かなり重要なウェイトを占めているということです。

起業家や経営者には孤独な方もいるようですが、そういった仲間と巡り合うことも、ひとつの目標としてはいかがでしょうか。友は心でつくるものであり、最大の資産になります。

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堀紘一(ほり・こういち)
1945年兵庫県生まれ。1966年にメリーランド州立大学に留学。69年に東京大学法学部卒業後、読売新聞社に入社して経済部記者として活躍する。73年三菱商事に入社。ハーバード大学に留学して80年経営学修士(MBA with High Distinction)を取得する。81年からボストンコンサルティンググループ(BCG)に19年にわたり勤務し、89年には代表取締役社長に就任。00年にBCGを退社し、ベンチャー企業の支援及び大企業の戦略策定・実行支援を行う、ドリームインキュベ―タ(DI)を創業。代表取締役社長に就任し、02年5月にマザーズ上場、05年9月には東証1部に上場。現在は同社代表取締役会長。経営コンサルティング業界の草分けであり、財界に広く人脈を持つことでも知られ、ビジネスマン向けの著書も多数。
株式会社ドリームインキュベータ(http://www.dreamincubator.co.jp/


エンリッチ編集部

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