同じ仕事の能力でも評価には点と地ほどの差が付く
組織のリーダーになると実感として理解できると思うが、リーダーというのは常に他人のことばかり気にかける仕事である。一方、リーダーの下で働く部下はたいてい自分のことばかり考えている。そして「上司は自分を評価してくれない」「無理な仕事ばかり振ってくる」「アイツばかりをえこひいきする」といった不満を抱えがちである。
こうした中で、少しだけでもリーダーの気持ちになって動ける人がいれば、リーダーから高く評価されるのは当たり前のことである。
上司に高く評価される部下というのは、ほとんどの場合、上司の心理が理解できている人である。同じ営業成績でも上司がノルマ達成で苦しんでいる時に契約を取ってくる人と、そうでない時に契約を取ってくる人とでは上司の評価が違ってくるのは当たり前である。
上司が部下にやって欲しいと思っている仕事をいち早く察知し、自ら率先してその仕事に取り組む部下と、指示されてからしか動かない部下とでは、仕事の遂行能力に大差がなくても、やはり評価は大きく変わってくるものだ。
これが会社の社長となると、その傾向はさらに顕著となる。
会社の社長というのは、顧客、株主、社員、銀行など、自分以外の人はすべてお客さんという感覚である。実際、すべての利害関係者をそれなりに満足させないと、経営を継続することはできない。ある日、社長に抜擢されたのが、誰も想像しなかった人物というのはよくあるケースなのだが、これは経営者に求められる能力が従業員とは根本的に違っているからこそ生じる事態である。そしてその違いというのは、「他人を理解する能力」なのである。
こうした鍛錬を毎日、積んでいる人であれば、そうでない人と比べて他人を理解する能力が格段に向上するのは当然のことだろう。このスキルを身につけた人は、分野が変わっても、同じように能力を発揮できるので、結果的に勝ち続ける可能性が高くなってくる。
経済的に成功した人は、異性にモテることも多いのだが、それはお金を持っているからという理由だけではない。他人を理解するスキルがあれば、当然、異性に対してどう振る舞えばよいのか理解できるので、相手から好かれる確率は上がってくる。
中にはまさに生まれ持った才能で他人を理解できるという人もいるのだが、このスキルは才能がなくても、訓練でほぼ確実に習得できる。仕事でうまくいっている人は、たいてい他人を理解する能力が高いので、うまくいっている人が、他人とどう関わっているのか観察することで、そのスキルは確実に自分のものにできるのだ。
成功している人は、若いうちからこうした自己トレーニングを行っており、これが後になって大きな武器になっている。この真実にいつ気付くことができるのかが、勝敗を分けるカギだと言っても過言ではない。
*この記事は2019年12月に掲載されたものです
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