日本の投資家にとっても重要な話題
サマーズ氏は、米国経済はリーマンショック以前から、すでに長期の停滞フェーズに入っていると主張している。リーマンショックの引き金となった住宅バブルが過度なインフレを引き起こさなかったのは、そのよい証拠だという。米国内では投資機会が減っており、根本的な需要不足に陥ったのが長期低迷の原因であるとサマーズ氏は分析している。
このところ世界経済は完全に米国に依存する形となっており、もし米国の成長に限界が来ているのだとすると、世界経済も長期にわたって停滞することにもなりかねない。現在、日本株は非常に好調だが、日本の輸出産業の業績が、好調な米国経済に支えられていることを考えると、日本にとっても無視できない問題である。
サマーズ氏は、財政出動を積極化して需要を作り出し、金融緩和を継続することで成長軌道に乗せるべきとの見解を示している。鈍化しつつある成長を回復させるには多少のバブルも必要という考えだ。
これに対して、バーナンキ氏は、雇用は完全雇用に近づいているとしており、需要不足で経済全体が停滞する状況に陥っていないと考えている。バーナンキ氏はむしろ、通貨安の影響を重視しているようだ。
米国は、しばらくの間、ドルの下落を放置し、事実上のドル安い政策を続けてきた。日本が一時、1ドル=80円になったのも、米国が積極的にドル安を是正しなかったからである。バーナンキ氏は、米国のドル安政策が、最終的に米国の需要低迷と低成長をもたらしたと説明している。
米国はシェールガス革命によって、石油の自給が可能となりつつある。米国の貿易赤字は急激に縮小しており、すでにドル高トレンドが始まっている。バーナンキ氏の説が正しいとすると、米国が金利の正常化に成功すれば、今後、持続的な成長モードに入っていくはずだ。
米国が今後、長期的に成長するのか、しばらく停滞が続くのかは極めて大きな違いである。日本人の投資家にとっても、これは重要な分岐点となるかもしれない。ヘッジファンドに籍を置く人物としてのバーナンキ氏の発言には今後も要注目といってよいだろう。