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加谷珪一|連載 
インフレ時代における資産の守り方

株か不動産か外貨か

株か不動産か外貨か

インフレ時代の資産運用といえば、不動産というイメージがあるかもしれない。確かに不動産は、物価に沿って価格が上昇していくのでインフレヘッジの投資対象となり得る。しかし日本の場合には、注意しなければならないことがある。それは人口の継続的な減少である。

かつて日本には不動産神話というものがあり、一等地の地価は下がらないと考えられてきた。しかし現在ではその神話はほとんど通用しなくなっている。これからの不動産価格は、賃貸した場合にどの程度の収益が得られるのかという収益還元法によって決定されることになる。もともとの地価が高いところでも、利便性が低かったり、人口が減ってくる地域の場合、不動産価格は下がってしまう可能性があるのだ。

インフレ時代における資産の守り方

インフレ時代における資産の守り方

実物の不動産に投資をする場合にはこのあたりに十分注意する必要がある。高い収益力を持つ優良不動産ばかりを集めたREIT(不動産投資信託)など、金融商品を通じて不動産に投資をする方が確実かもしれない。

株式も基本的には同じである。名目上の株価は原則として物価に比例するが、インフレに強い企業とそうでない企業がある。インフレに弱い企業は収益が悪化するので、物価の上昇ほどには株価が上がらない可能性がある。グローバルに事業を展開している企業など、インフレへの耐性が強い銘柄を選択することが重要である。

外貨はインフレの際にはもっとも確実な投資先となる。しかしながら、ただ外貨を保有していただけでは、インフレをヘッジする機能しか得られない。お金の絶対値を増やすためには、債券や株式への投資が必要であり、やはり銘柄選別が必要になってくる。
金のような実物資産も同様である。インフレ時にはヘッジの役割を果たすが、持っているだけでは、資産の絶対額が増えないことは、常に意識しておいた方がよいだろう。

非常に皮肉なことだが、インフレ時代に最も強いのは、資産のほとんどない給与所得者である。戦争直後、日本経済は大変なインフレに見舞われたが、現金を中心に運用していた富裕層の多くが資産を消滅させてしまった。一定以上の資産を持つ人にとっては、真剣にその運用方法を考えなければいけない時期がすぐそこまで来ている。
 


加谷珪一(かやけいいち)
評論家
東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事、
その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。
マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う。
億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)
加谷珪一のブログ http://k-kaya.com

加谷珪一

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