日本郵政グループ3社が11月4日に株式を上場する。このクラスの大型上場は、1987年に上場したNTT以来なので、市場の期待はかなり高まっているようだ。3社とも売り出し価格が決まったが、すべて仮条件価格の上限となっており、投資家からの引き合いが強いことが分かる。
一方、日本郵政グループについては、今後の成長性を疑問視する声や親子上場の弊害など、投資対象としては魅力的ではないとの声も聞こえてくる。日本郵政グループは果たして買いなのだろうか?
成長力は乏しいが割安ではある
今回、株式を上場するのは、日本郵政株式会社、株式会社ゆうちょ銀行、株式会社かんぽ生命保険の3社。日本郵政は、郵便事業に加え、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式を保有するグループの持ち株会社となる。ゆうちょ銀行とかんぽ生命は、それぞれ銀行業務、生命保険業務を行う金融機関という位置付けだ。
本来、3社は別々の業務を行っており、評価基準も異なったものとなるはずだが、日本郵政が金融2社の株式を保有しているので、結局のところ、日本郵政の業績は、金融2社の業績に依存することになる。最終的には金融2社の業績がどうなるのかで、グループ全体の業績が決まってくると見てよいだろう。
では3社の具体的な業績について見てみよう。日本郵政の2015年3月期における当期利益は約4830億円、ゆうちょ銀行は約3700億円、かんぽ生命は約820億円となっている。各社が公表している2016年3月期の業績予想は、日本郵政が3700億円、ゆうちょ銀行は3200億円、かんぽ生命は840億円なので、かんぽ生命を除くと来期は減益予想ということになる。特に規模の大きい郵貯銀行が減益予想というのは全体にとってあまりよい状況とはいえない。
同グループが以前に公表した中期経営計画によると、グループ全体における連結純利益は2017年度に4500億円程度となっていることを考えると、短期的に同グループの経営状況が大きく変わるとは考えにくい。上場後、順調に利益が成長し、株価も上昇していくというシナリオは描きにくいと考えた方がよさそうだ。
もっとも株式投資は利益成長だけを見込んで行うわけではない。それほど成長期待が高くなくても、経営が安定しており、他の銘柄に比べて割安であれば、十分に投資対象となる。株価の割高、割安を示す代表的な指標のひとつにPER(株価収益率)と呼ばれるものがある。これは株価が、今の利益の何倍になっているのかを示した指標だが、言い換えれば、市場が何年分の利益の先取りをしているのかということを意味している。つまり市場の期待値である。
PERについては、売出価格で計算すると、日本郵政が16.4倍、ゆうちょ銀行が17倍、かんぽ生命は15.7倍となり、上場している他社と比較すると割安感がある。相場全体が盛り上がることになれば、いずれはこうした割安銘柄にも注目が集まることになり、一定の上昇が期待できるかもしれない。
一方、PERが低いということは、今後の成長力が乏しいことの裏返しでもある。市場全体が低迷した場合には、大きく値を下げない代わりに、上昇も期待できないということになる。