2020年までにアートを
みんなの手が届くところに
E:日本では「アートを買わせること」に特化したイベントは少ないですよね。
來住:その通りです。かっこよくしたい。僕たちの下にいる世代が「アートを買うことはかっこいい」とならなくてはいけないと思います。「アートって、かっこいいですね」といってくれるような。
僕たちのスローガンは「Art is a lifestyle」。今はアートという言葉は遠いところにあるイメージかもしれないけれど、それを今より少しだけみんなの近くに持って行きたい。そして2020年までにみんなの手に届くようにしたい。ライフスタイルにはいろんな色があって、みんな輝かなければいけない。その色と光を反映したのが今年のポスターです。
E:アートフェア東京2016では、減価償却の対象になる100万円未満の作品を集めた「100KIN」が目玉だとお聞きしました。
來住:「100KIN」ってテレビ的表現なんです(笑)。参加ギャラリーから100万円未満の作品を30点ほどお預かりして販売します。実はこの「100KIN」コーナーはアートフェア東京2016への入り口的な意味も持っています。
「100KIN」で手頃な作品を買ってもらうと同時に、次世代アーティストのためのアワードを開催し若い作家を育成していくことも必要だと考えます。「経済の摩擦はあってもアートで摩擦は起きない」とアートを中心に思考すると日本の抱えるいくつかの問題は解決するかもしれない、そんな風に考えているんです。
中国の富裕層に
武家文化を理解してもらう
E:他にも企画を進めているんですか?
來住:すでに、去年の9月に日本のお客様、12月には中国の富裕層を金沢に招いて日本のアートを体験してもらう「アートツーリズム」という企画を実施しています。中国のお客様をご案内した際は、まず、北陸新幹線のグランクラスで金沢までお連れして、21世紀美術館館長にご挨拶をお願いします。夜は「金城樓」という料亭で「京都の王朝公家文化、東京の町人文化。そしてもうひとつ、金沢の武家文化を知っていただきたい」とお話しします。そこで武家文化がどういうものかを説明すると、翌日中国の皆さんは工芸品を買ってくれるんです。
文化を説明して理解してもらう。これがいちばん大切なことだと思います。これはいろいろな新聞が取り上げて記事にしてくれました。アートツーリズムは今年、テーマ別観光のひとつとして観光庁の中にも文言として登場しました。
E:アートを軸に地方への海外観光客を増やしていくと。
來住:海外との連携も強くしていきます。昨年、日本、北京、香港、台北、韓国、シンガポール、インドネシア、オーストラリアの8カ国地域の画廊協会会長を集めて「ASIA PACIFIC ART GALLERY ALLIANCE(APAGA)」を発足させました。アートフェア東京2016では、アジアのアートマーケットをどのように世界へ発信していくかについての議論をします。
僕は自分の団体を大きくするよりも、この国のアートを大きくしたいんです。日本のアートも変えるし、海外も巻き込んでアジアのアートを世界に広めていきたい。