ENRICH(エンリッチ)

The Style Concierge

アートフェア東京2016を歩く <前編>

シンガポールから逆輸入
想像の時間を描く木彫り作家

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われわれが最初に向かったのは、会場でひときわ異彩を放つ作品を展示していた「gallery UG」。

スキンヘッドに水中メガネをかけた人物の周りを雲のような気体が取り囲むという、なにやら怪しい作品が目に止まります。タイトルは『トロピカルブレンド』。作者は1982年生まれの野原邦彦氏。

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野原氏はケヤキや楠を削って、儚くも消えていく想像の時間や自由をテーマにした作品を生み出しています。

「手に持ったコーヒーの湯気は浮遊感を表しています。水中メガネをかけているのは、想像の世界を泳いでいるからなんです。これをかけることで外から自分が見られないし、安心感を得られる。つまり、フィルターのようなものですね」。

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すでにシンガポールなどの海外では高い評価を得ている野原氏の作品。ギャラリーオーナーの佐々木栄一氏は語ります。「海外は無価値なモノをブランディングするのに対して、日本はオーソリティをありがたがる傾向にあります。“海外で評価の高い”というふれ込みに弱い。だから、私はいい作家は海外でブランディングして日本に逆輸入させます。クリスティーズ香港の責任者が彼の作品に興味を持ってくれているのですが、今後オークションに出ることになると僕らの手から離れたところで価格が動いてしまいますから、今がお安く提供できる最後のタイミングでしょうね」。

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「私たちは作品の価値を担保することを第一に考えています。破損してしまった作品のリペアも受け付けますし、他のギャラリーに所属作家の作品がわたってしまっても、それは複数のギャラリーが価値を認めたということなので、客観的な価値が高まったということなんです。そういったリレーショナルなギャラリーがプロモーションしてくれれば、私たちが単体で売り込むよりも効果があります」。

オークションなどでいたずらに値をつり上げて価格競争に走るよりも、堅実な方法で価値を守っていく長期的な視点がアート投資には重要といえるでしょう。

エンリッチ編集部

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