GMO熊谷氏が目指すのは
世界一のオピーコレクター
アンディ・ウォーホルやダミアン・ハーストも収集していた熊谷氏は、今ではジュリアン・オピーだけをコレクションしている。氏は常々、経営ポリシーとしてスタッフに「提供するサービスは価格・スペック全てにおいてナンバー1になれ」と発言している。それを体現するべく、アートのコレクションでも1人の作家を極め、今や世界一のジュリアン・オピーのコレクターになろうとしている。
熊谷氏はジュリアン・オピーの作品と、自らのフィールドであるインターネットの共通点を以下のように語っている。「オピーは最も複雑な存在である人間をシンプルな形で表現している。複雑に見えるインターネットも0と1で構成されている。オピーの作品とインターネットには共通点がある」。
アートを見ることで
右脳の活性化を図る
マネックス証券の松本氏がレコメンドするのは日本人写真家の松江泰治。
今後の株のトレンドや世相を見るという意味でアートを捉える松本氏は、アートには未だ目に見えていないものが表れており、また、直感や感性を司る右脳の働きを呼び覚ましてくれるという点で注目している。そして、「人に投資する、応援する」という視点でもアートを捉えている。
経済の時代が終わり
21世紀は文化の時代へ
スマイルズの遠山正道社長が推薦する作家はラファエル・ローゼンダール。
自分の作品をWebサイトのドメインごと販売しており、売れた作品は24時間誰もがアクセスできる状態になっている。スマイルズは作家として作品を提示し始めている。
「ビジネスって煙にまけないんです。常に衆目に晒されている。アートもその人がそのまま出る。企業としてなぜアートを行っているのかというと、うまく説明できない。やらざるを得ない、そういう衝動かもしれない。20世紀は経済の時代で、21世紀は文化・価値の時代。これまでの経済の足し算引き算だけでは成り立たない」と語る遠山氏。氏が見出すビジネスとアートの共通項は「何もないところから形にしていく」点にある。
数々の社会問題を解決する
ソーシャライジングなアート
テイクアンドギヴ・ニーズの野尻佳孝会長が推薦するのは「TRUNK(HOTEL)」のオリジナル自転車。年間およそ5.5万台もの放置自転車があるという東京都。放置により廃棄になった自転車を引き取り、まだ使える部品を集めて再生したソーシャライジング自転車だ。
「TRUNK(HOTEL)」とは、2017年春の開業を目指して渋谷区原宿神宮前に建設中のホテル。地域活性や社会改善に貢献する価値の提供を目的としており、その一環として今回の自転車も製作された。野尻氏が理想とするのは「持続可能な世の中に役立つアート」だ。
周辺の地場を生み出す
アートの力
ホセ・パルラが描く色鮮やかな抽象絵画を推薦したのは、ロフトワークの諏訪光洋社長。
インタビューでは「アート単体の能力や価値だけじゃなくて、周辺の磁場みたいなものを作るのがアートの力だと思うし、僕はそういう作品が好き」と答えている。
「ひとりのアーティストをひとりの人として見てもらって、尊敬できるところがあれば購入する。そうすることでアーティストを応援できる。アートとは作家だけでなく、購入する人の表現でもあると思っています。買う人のセンスが出るんです。経営者の皆さんが推薦する作品には、どこかその人らしい個性が表れています」(伊藤氏)。
7人の企業家が考えるビジネスとアートの関係にもそれぞれの個性が反映され、アートの奥深さ、懐の深さが伺い知れる。既存の価値観が大きく移り変わろうとしているこの時代にこそ、現代を反映するアートの力が必要なのかも知れない。