国内中小・中堅企業におけるM&A(企業の買収合併)環境が、ここ数年で大きく変貌を遂げた。かつて、M&Aといえば「会社の身売り」などネガティブなイメージがつきまとったが、それは過去の話。いまは、自社のさらなる発展や永続を目的に選択する経営者が増えている。ここでは、国内最大のM&A支援実績を持つ株式会社日本M&Aセンターの業界再編支援室長で、今秋に『「業界再編時代」のM&A戦略』(幻冬舎)を上梓した、渡部恒郎氏に、その実情を伺ってみた。
3分の2の中小・中堅企業に後継者はいない!
――日本M&Aセンターは、国内最大のM&A支援企業として知られています。まず、御社についてお聞かせください。
渡部 当社は企業の「存続と発展」を目的とした友好的M&A支援サービスを創業以来24年間提供し、手掛けた案件は2500件以上。中小・中堅企業の仲介実績は国内トップで、ここ数年は毎年20%増え続け、前期は338件の成約がありました。2007年には東証一部上場も果たしています。中小・中堅企業のM&Aは公表されているもので年間2,285件(2014年)なので、1割以上は当社の仲介によるものです。M&A業務といえば一般的に投資銀行や大手証券会社を思い浮かべますが、彼らが取扱う規模とは違い、中小・中堅企業の後継者問題を解決するM&Aを推進しています。圧倒的な成約件数で社会貢献性の高いM&A業務に取り組んできました。
専門会社で完全独立系というのも、当社の特徴です。役職員数200名のうち、160名が専門のコンサルタントで、社内に弁護士、公認会計士、税理士、米国公認会計士、司法書士、中小企業診断士などの有資格者を抱え、諸問題へのタイムリーな対応ができる体制を整えています。地域を代表する会計事務所が設立した地域M&Aセンターも全国に約640、地域M&Aセンター以外の各種士業者は全国2000超、地方銀行の9割、信用金庫の7割、東京・大阪・名古屋をはじめとする全国の商工会議所など、全国をまたぐネットワークを構築し、M&A情報をつねにアップデート、クオリティが高くスピーディなレスポンスを心がけています。金融機関や会計事務所、商工会議所からトレーニーを受け入れ、ノウハウを提供していますが、契約書や株式の評価方法は当社の仕様が業界標準になっています。
私自身は2008年に新卒入社し、過去70件を超えるM&Aを成約に導きました。この業界はコンサルタント1人当たり年2件程度の成約、当社の平均でも1人年4件がアベレージですから、経験だとトップクラスと自負しています。代表的な成約案件であるトータル・メディカルサービス社とメディカルシステムネットワーク社のTOBは日本の株式市場で過去最高のプレミアムがつきました(グループ内再編を除く)。現在は業界再編支援室長を務め、主に業界再編型M&Aを担当しています。