そういえば名作漫画「銀河鉄道999」の999号の機関室内、アルカディア号のメインブリッジをはじめとする松本零士氏作品は、機械好き、クロノグラフ愛好者を惹きつけるものがあるが、それもそのはず。松本先生自身が熱烈なクロノグラフ愛好家。クロノグラフブームの火付け役でけん引したといっても過言ではない。日本で機械式時計ブームが起こる以前から、たびたびライフスタイル誌などでクロノグラフを紹介し魅力を語ってきた。若く貧しかったころも今も、その腕には変わらず手巻き式でSS(ステンレススティール)製ケースの機械式クロノグラフがある。
スピードマスター ムーンフェイズ
1985年製。世界限定1300本。月の満ち欠けを表示するムーンフェイズ。手巻。SSケース。
松本零士氏の私物。
デイトナ
Ref.6265.手巻。SS(ステンレススティール)ケース。
松本零士氏の私物。
松本先生は現在(2016年2月)、78歳。いまから53年前、25歳の時に全財産の5万円をを叩いてブライトリング「ナビタイマー」を買って以降、半世紀以上経過した現在も愛用し続けている。劇場版アニメ「銀河鉄道999」に登場する時間城は、先生が最初に買ったクロノグラフがモチーフだと聞いた。現在でもクロノグラフを枕元に置いたり、いつお会いしても、その腕にはレザーストラップ仕様に換えたオメガ「スピードマスター ムーンフェイズ」(1985年製)やロレックス「デイトナ」(Ref.6265.1970-1980年製)が装着されている。
松本先生の父親(宇宙戦艦ヤマトの沖田館長のモデル)は、航空パイロットだった。そのDNAが、先生をクロノグラフ好きに向かわせたのならば自然な流れだ。作品に描かれてはいないが、松本零士作品「男おいどん」の大山昇太、「銀河鉄道999」の星野鉄郎、キャプテンハーロックもきっと、機械式クロノグラフを持っているはずだ。
その松本零士作品を見て育ち、作品の世界観が血肉となった自分自身が、ステンレススティール・ケースのメカメカしいクロノグラフに魅了されるのはこれまた自然の流れだろう。
TEXT: 松田 朗/Akira Matasuda
時計ジャーナリスト
Pavone、Begin、時Begin、VOCE、FRaU、POPEYE、DIMEといった富裕層向けライフスタイル誌や専門誌、女性誌などにかかわる。各国大使館での文化イベント、『松本零士の宇宙観とクロノグラフ展』なども手掛ける(株)フォーシスターズ代表取締役。東京ニュース通信社特派記者。