E:日本版はどういった読者の方に読んでもらいたいですか?
松尾「ファッションも時計も車もこれだけ高いものを載せているので、まずは富裕層に読んで欲しいと思います。しかし、大前提として海外の富裕層へのアプローチと同じではいけないと考えています。日本のマーケットを見たときにはやはり一億層中流みたいな所はりますよね。欧米のように庶民と富裕層が明確に分かれていない。欧米の庶民は高級ブランドの服は買わないし、高級車にも乗りません。けれども、富裕層の子は父親が100万円の時計してたから自分もそれを使ってるとか、高級車乗ってたから自分も乗ってるとか、そういった世界に生きている。日本にはそういう層がどれ位いるのか?ということは心して考えなければいけない。これまでの日本のメンズファッション誌は、数十万円のスーツや靴はあくまで中流で極端に服好きな人が趣味で買っているという理解でした。でも、ここ10年の間にちょっと日本も変わってきてるんじゃないかなという気がしてまして。二極化、二極化と騒がれて久しいですが、若者の間ではアントレプレナー的な夢を追ってる人と完全に保守的な人との二極化が進んでいるような。だんだん日本も変わってくるのではないかなと。ただ、そういった層はまだ形成されつつある状態なので、こういう人がなにを好むのかを捉えるのは難しいです。単に高いものを羅列するだけじゃダメ。いろいろな手法で彼らの嗜好にあったものを作っていきます」
E:確かに、ただモノを羅列するだけの時代ではないですよね。
松尾「単にブランドだから売れる時代じゃない。なんでそれがいいのか?バックグラウンドを解き明かすことが必要です。今までファッション誌の編集者って欧米型のマーケティングが嫌いだったんです。おもしろいものを作れば売れる、というのが昔気質の編集者。でも、今は雑誌もラグジュアリーブランドのようにマーケティングを取り入れなければならない。『THE RAKE』も書店で売るだけではなくて、高級ホテルのロビーやラグジュアリーカーのディーラーで手に取れたり、時計店の上位顧客に発送したり。そういった工夫が必要です。」
E:ファッションの観点で見ると『THE RAKE』はなにが強みですか?
松尾「やっぱりファッションがすごく好きで、趣味としてファッションを捉えている人がメイン読者かと思うので、そういった人に向けて日本の媒体では提供できないディープな情報を届けていきたいです。うちは副編集長がイタリアに住んでるので、本場のファッション情報を届けられます。これが『THE RAKE』のひとつの柱ですね。ファッションに関してはクラシックなドレススタイル限定。テーラードジャケットにかっちりしたシャツとネクタイを合わせて、みたいな。クラシックなメンズファッションを追求してディープな情報をお届けしたいですね」
E:ターゲットの年齢層は?
松尾「それはあえて決めてません。高齢者でもクラシックファッションに興味がない人もいるし、若者でもクラシックに興味のある人もいる。だから、あえて区切らない。若者でもお年を召した方でも好きで読んでくれるならウェルカム。エイジレスですね。最近は、若いテーラーとかシューメーカーの人も多いですから。僕らが作っていた『MEN’S EX』みたいな本がクラシックイタリアを日本に紹介して、それに触発された読者がイタリアやイギリスのテーラー、サルトリアで修行して日本で店を開く。そういった人は多いですよ。今回の『THE RAKE』第2号でも20~30代の靴職人を紹介しています」
E:先ほど、ファッションは二極化しているとおっしゃいましたが、その傾向は今後も続きそうですか?
松尾「今後はもっと極端になる気がしますね。昔はファッションのトレンドがあると猫も杓子も飛び乗った。DCブランドブームのときはお金がなくても20回ローンで洋服を買うような。今の若い人は身の丈以上のものを買ったりしません。ファッションに興味がない人たちと、積極的にファッションを楽しもうという層に分かれてきてます」