このところアマゾンやグーグルといったネット事業者のサービス競争が激しさを増している。先頭を走っているのは、注文から1時間以内に商品を届けるという驚きのサービスを開始したアマゾンである。ネット・ビジネスの世界では今、何が起こっているのだろうか。そして私たちはこれらのサービスをどう使いこなせばよいのだろうか?
アマゾンが大判振る舞いをする理由
アマゾンの新サービスは「プライムナウ」は、東京の消費者にちょっとした衝撃を与えている。1万8000点もの商品が、注文から1時間以内に配送されるからである。
対象となるのは、年会費3900円の有料会員。1回あたり2500円以上の注文で、980円の配送料を支払えば、1時間以内に商品が到着する。2時間以内でよければ配送料は無料である。時間帯については、1時間配送の場合、朝6時から深夜1時まで対応しており、2時間便では、朝6時から深夜0時までの2時間枠を使うことができる。
今のところ、注文は専用アプリからのみとなっており、Webサイトからの注文には対応していない。配送エリアも限られている。対象となっているのは、東京都の世田谷区、目黒区、大田区、品川区、渋谷区、港区、杉並区、新宿区の一部地域。区内全域が配送対象となっているのは、世田谷区と目黒区のみである。
限定されたサービスではあるが、実際に1時間で配送されるというインパクトは大きい。実際に利用した人からは「気持ち悪いくらいに早い」という感想も聞かれた。
アマゾンは、このプライムナウをはじめとして、このところ有料会員向けのサービスを次々に拡充している。今年9月には、映画やドラマが見放題になるサービスを開始し、11月には100万曲の音楽が聴き放題になる音楽配信サービスをスタートさせた。
有料会員であれば、1時間配送サービスに加え、100万曲の聴き放題と、映画やドラマの見放題サービスが自動的に付いてくる。さらに電子書籍キンドルで販売されている書籍が一部、無料になるサービスもあり、まさに至れり尽くせりといった状況である。
アマゾンは、なぜここまで大判振る舞いをするのだろうか? その理由は、各社が同じようなネット・サービスを提供するようになったことで、競争環境がより複雑になってきたからである。これに伴って差別化の要素も多様化しており、必ずしも単体サービスとして優秀であることがシェア獲得につながらなくなっているのだ。アマゾンは総合力で顧客を囲い込む戦略に舵を切ったものと考えられる。