米国の年内利上げがほぼ確実になったことで、株式市場には逆に安心感が広がっている。年末も近くなってきており、そろそろ来年の投資戦略を練り始めているという人もいるだろう。名だたる世界の投資家は、どのような投資戦略で投資に臨んでいるのだろうか。彼等の保有銘柄の変化から探ってみたい。
ウォーレン・バフェットは市場の変化を感じ取っている
ここでは、長期的な投資で有名なウォーレン・バフェット氏と、ヘッジファンドの帝王ジョージ・ソロス氏を取り上げる。両者はともに世界トップレベルの投資家だが、その投資手法は正反対である。
バフェット氏は、長期的に付加価値を生み出す堅実な銘柄を中心にポートフォリオを組んでいるが、ソロス氏は常に変化の大きい投資対象に乗り換えるスタイルだ。最新の売買動向を見れば、彼等が今後の市場の動向をどう見ているのか、その一端を伺い知ることができる。
バフェット氏率いる投資会社バークシャー・ハサウェイ社が米証券取引委員会(SEC)に提出した資料によると、9月末時点においてバフェット氏は、IBMやゼネラル・モーターズの株式を買い増す一方、ウォルマート・ストアーズ、ゴールドマン・サックスの株を売却している。その他の銘柄についてはあまり保有株数に変化がない。
これまで米国経済は好調と言われながらも、量的緩和策が継続しており、リーマンショック後の後遺症から抜け出せない状況が続いていた。つまり、これまでの市場は、金利が低く、景気の先行きについて100%の自信が持てない状態だったということになる。
このような局面では、小売やヘルスケアなど手堅い分野が有利になる。景気の先行きに多少の不安があったとしても、多くの人は生活必需品の購入までは控えないからである。バフェット氏が米国最大のスーパーであるウォルマートの株式を保有していたのはこうした理由からと考えられる。
しかし、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は昨年11月、とうとう量的緩和策の終了を決定し、市場の焦点は利上げのタイミングに移った。8月に中国ショックが発生したものの、市場の混乱は一時的なものにとどまっており、現在では年内の利上げがほぼ確実な状況となっている。
もし米国の景気回復がホンモノということになると、今後は金利が上昇し、インフレ懸念が出てくる可能性もある。こうした局面ではむしろエネルギーや製造業の株価が好調になる。つまり市場の雰囲気が大きく変化するのだ。米国では原油価格が下がっていることもあり、燃費の悪い高価な大型車が飛ぶように売れている。確かに市場心理は着々と変化しているのかもしれない。
バフェット氏もこうした市場の変化を感じ取ったのか、7月から9月の間に、ウォルマートを売却する代わりにIBMとゼネラル・モーターズを買い増している。自動車は米国の消費を代表する商品であり、景気が上向けば確実に販売台数が伸びる。当然のことながら、原油安はさらにその追い風となるはずだ。