『エンリッチ』の人気コンテンツ「シンガポール リアル 起業ライフ」でお馴染みの、岡村聡氏が、この度『世界の超富裕層だけがやっているお金の習慣』(KADOKAWA)を上梓した。これを記念して、日本に一時帰国した折に、特別インタビューを行った。(前編を読む)
シンガポールで暮らすからこそ見えてきた、富裕層たちの行動や習慣。その真相に迫っていこう。
東南アジアの富裕層は日本の不動産に興味津々
東南アジアの富裕層に接していると、日本を好きな人が多いという印象を受けます。東京や京都、大阪は当たり前で、日本人にあまり馴染みのないエリアにも詳しいようです。私は去年、城崎温泉に行き外湯を回ったのですが、浴衣を着て下駄をはいた外国人とたくさんすれ違いましたし、温泉でも手ぬぐいを湯船につけないというように、マナーを守りながら日本文化を楽しんでいる光景もたくさん目の当たりにしました。温泉につかると、アジア人だけではなく、隣はブラジル人、反対はフランス人というように、なかなかないシチュエーションです。聞くと、ミシュランを見て来たとか。日本は四季がハッキリしていて、そういった点も興味を誘うようです。
不動産への関心も高まっています。そもそも日本は不動産の規制が緩く、世界中を見渡しても、外国人が土地付き物件をここまで自由に買うことができる環境は珍しいです。中国だと国民はほとんど買えませんし、シンガポールは外国人規制が厳しいですから、アジアでは日本くらいでしょう。円安も手伝い購入する富裕層が増えています。
エリアとしては東京が圧倒的に人気は高いのですが、リゾート地への注目が高まっています。例えば、北海道のニセコでは高級マンション市場が活況ですが、ほとんどが外国資本で買っているのも外国人。ホテルも外資が目立ち、『パークハイアット ニセコHANAZONO』が2019年に、その翌年までには『リッツ・カールトン』も開業する予定です。軽井沢も東京から新幹線で1時間というアクセスの良さ、冬はスキーも楽しめるということから好評です。現地にはレストランもたくさんあり、街は洗練されています。沖縄もディズニーを誘致していることから、今後は面白くなるかもしれません。このように、日本各地にポテンシャルの高さを感じている外国人の富裕層は多いのです。
彼らがバカンスも投資もワールドワイドに行うかというと、グローバルなネットワークのなかから有益な情報を捉えられるという環境もありますが、国籍の概念があまりないことも関係していると思います。父親はアメリカ人、母親はスイス人、自分自身はモナコ生まれ、あるいは国籍をいくつも持っていることもあります。ですから、出身地を聞くことはたまにあっても、国籍を聞くことはありません。私たちのように、日本人の夫婦で子どもも日本人というほうが、むしろレアなのです。
一方、日本人の富裕層も世界の動きを敏感に捉え、行動を起こし始めています。2015年7月には「出国税」の制度がスタートしましたが、さかのぼりゴールデンウィーク前後は駆け込みが目立ちました。もちろん、税金の有無は関係なく出ていく人は出ていくのですが、若手の起業を中心に、大きな勝負をしたい人は移住という選択肢を取るようです。日本だとシュリンクしていくマーケットなので、狩りをするなら外に打ってでようと考えているのです。
ベンチャーに限らず、光学ガラス大手のHOYAはシンガポールへ事業部門や本社機能を移転していますから、ビジネスを目的とする海外移住はトレンドなのかもしれません。特異なイメージがあるかもしれませんが、ビジネスをするために海外に行くだけですし、いまは食事も困りません。帰ってこようと思えば、それこそ私のようにいつだって帰ってくることができます。移住=日本を捨てるというわけでもなく、私も家族も日本の文化や食事は大好きで、むしろ、海外で子育てをしていると余計に日本人だと思う場面は多くあります。成長の機会を求めたら海外だったというだけにすぎません。