北欧フィンランドがベーシックインカムの導入を検討していると報道されたことをきっかけに、ベーシックインカムに関する関心が再び国内で高まっている。以前、日本では月8万円を国民に支給するというベーシックインカムの案が議論されたことがあったが、その後、話題は立ち消えになっていた。財政負担が重く実現は不可能という意見もあるベーシックインカムだが、果たして日本では導入可能なのだろうか。
必要最低限の支援のみで後は自己責任
ベーシックインカムは、全国民が最低限の生活を送るために必要な金額を無条件で給付するという制度である。通常の福祉制度は、生活が苦しいと考えられる人たちに限定する形で生活保護などのサービスを提供するという考え方に立脚している。しかし、誰が貧困状態になっているのか正確に把握するのはたやすいことではなく、本当に助けを必要としている人になかなかサービスが行き渡らないという問題が指摘されている。
審査を適切に実施したり、不正給付を是正するためには大量の公務員が必要となるが、これがさらに福祉の費用を増大させる原因になっている。つまり既存の福祉はかなり非効率的な状況にあるといってよい。
ベーシックインカムは、こうした欠点を克服するために編み出された手法のひとつである。ベーシックインカムでは、全員に最低限度の現金給付を行う代わりに、それ以外の社会福祉は原則として実施しない。与えられた金額をどう使うのかは自己責任であり、それ以上は行政はタッチしないという考え方がベースになっている。基本的には自己責任だが、最低限度の金額は国が保証するという仕組みだ。
全員に基礎的な生活費を給付するにはかなりの財源が必要となるが、既存の福祉予算を大幅にカットできるため、運営方法によっては採算が取れるとの期待がある。また、全員に無条件で現金が給付されるので、原理的に不正受給という問題は生じない。さらにいえば、ベーシックインカムの範囲で生活できない人に対するケアは行われないことから、福祉に対する過度な依存も防げることになる。公務員の数も削減できるので行政のスリム化にも貢献する。
いいことずくめの制度に見えるが、実現はそう容易ではない。最大の問題はやはり財源である。