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トランプ大躍進。米国は孤立主義の国になるのか?

エンリッチ トランプ氏

米大統領選は、共和党のトランプ候補の大躍進によって、現実にトランプ大統領が誕生する可能性について意識せざるを得ない状況となってきた。トランプ候補は、人種差別発言ばかりが目立っており、本当のところどのような政策を掲げているのかはっきりしないところがある。しかし、これまでの発言を振り返ってみると、実は現在のオバマ路線との共通項が多いことに気付く。もし本当にトランプ大統領が誕生した場合、米国はオバマ政権以上に孤立主義的傾向を強める可能性が高い。多くを米国に依存する日本にとっては、シビアな時代となるだろう。

主流派からの期待が高かったルビオ氏は撤退

大統領選序盤のヤマ場であるスーパーチューズデーは、トランプ氏の圧勝となった。トランプ氏は7つの州で勝利を収め、指名獲得に向けて大きく前進した。保守強硬派のクルーズ氏は3つの州で勝利、共和党主流派からの期待が高かったルビオ氏は票を伸ばせず、勝利はミネソタのみとなった。その後、ルビオ氏は地元のフロリダで敗北、選挙戦からの撤退を表明している。

過激なお騒がせ候補と思われていたトランプ氏が大躍進したことで、トランプ氏が本選を戦い、場合によっては大統領に就任する可能性について意識せざるを得ない状況になってきた。トランプ氏は移民や女性に対する差別的発言を繰り返しており、常識で考えた場合、大統領にふさわしい人物とはいえないだろう。

実際、共和党内ではスーパーチューズデーの結果を受けて、トランプ降ろしが本格化している。前回の大統領候補者で元マサチューセッツ州知事のミット・ロムニー氏は「トランプ氏は詐欺師であり、大統領にふさわしい気質も判断力もない」とトランプ氏を激しく批判。トランプ氏に投票しないよう呼びかけるという異例の事態となっている。
またブッシュ前大統領もトランプ氏を批判したほか、場外戦ではあるものの、カトリック教会のフランシスコ法王もトランプ氏の発言について「キリスト教徒のものではない」と強く批判している(ちなみにトランプ氏はカトリック信者ではない)。トランプ氏に勢いがあるとはいえ、現実に大統領になるのはそう簡単なことではないだろう。

トランプ氏の主張はむしろ民主党に近い

トランプ氏は、過激な発言ばかりが注目されており、彼の政策に真剣に耳を傾ける人はほとんどいなかった。またトランプ氏自身も、理路整然と自身の政策について語ってきたわけではない。

だがトランプ氏の躍進ぶりがはっきりするにつれて状況は変わってきている。マスメディアも彼の政策についても関心を寄せるようになり、トランプ氏もそれを自覚し始めている。安全保障問題のエキスパートをブレーンとして登用したのも、大統領就任を具体的に意識してのことだろう。

ではトランプ氏は具体的にどのような政策を持っているのだろうか。これまでの彼の発言を聞いてみると、驚くべきことが分かる。彼の掲げる政策は、従来の共和党とは正反対であり、むしろ現行のオバマ政権にそっくりなのである。

加谷珪一

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