前回のコラムで、マカオは10年前に世界最大のカジノ売上を誇る都市となってそこからさらに躍進したけれども、ここ数年は曲がり角に差し掛かっていることを紹介しました。今回は、今後マカオがこの停滞を打破して発展していくためには不可欠である、カジノ以外のエンターテイメントについて紹介します。
マカオのカジノ以外の目玉は、世界で最も高額なコストをかけたショー「The House of Dancing Water (以下ダンシングウォーター)」です。ダンシングウォーターは、シティオブドリームスというリゾートにある常設型の劇場で行われるショーです。ちなみに、このシティオブドリームスは、本連載のシドニーの回で紹介したオーストラリアのカジノ企業メルコクラウンにより作られました。
今回のマカオ訪問でダンシングウォーターを初めてみましたが、これまで見てきたシルクドゥソレイユなどのショーと比較してもそのスケールと迫力に圧倒されました。ダンシングウォーターの劇場は約2.5億ドル(約280億円)の巨費と5年の歳月をかけて完成されました。2,000席の巨大な円形型の劇場の真ん中に、オリンピックサイズプール5杯分に相当する370万ガロンの水をたたえる大きなプールが設置されていて、このプールがタイミングごとに噴水となったり、プールの中から巨大な船が出てきたり、さらにはプールの上にステージがせりあがってきてダンスやバイクショーが展開されたりと、目まぐるしく変化することでショーは進んでいきます。
台詞が全くなくストーリーが進んでいくために、1度見ただけでは話の内容は詳しく分かりませんでしたが、迫力ある多彩な場面が次々に繰り広げられるので90分間飽きることなく観劇できます。プールに最大25メートルの高さから次々と演者がダイブしたり、命綱なしでの空中ブランコが披露されたり、はたまた観客席ぎりぎりまでバイクがジャンプしてきたりするなど、様々なスタイルのアクロバットが展開されます。ダンシングウォーターは2010年9月にスタートしましたが、演者たちは2009年1月から2年近くに渡って練習をしてきたとパンフレットで紹介されていました。
演出を手掛けるのはベルギー人のフランク・ドラゴン氏です。ドラゴン氏は1985年から1998年までの15年近くに渡って、シルクドゥソレイユのほぼ全てのショーの演出を手掛けてきた大物です。1998年に独立して、ショーの演出を専門とする企業ドラゴンを創業してからも、ラスベガスでのセリーヌ・ディオンによるショーや、ラスベガスで最も大規模なカジノリゾートであるウィンの目玉であるショー”Le Reve”を成功に導きました。旧来のサーカスと明確に異なる、洗練された演出とストーリー性高いショーにより、シルクドゥソレイユは世界中のエンターテイメントシーンを席巻してきましたが、ダンシングウォーターはドラゴン氏がシルクドゥソレイユのショーで培ってきた演出技術の粋を堪能できます。