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東京から地方への強制分配が
都知事選によってあらためてクローズアップ

エンリッチ Tax Revenue share

東京都知事選挙が与党分裂という混戦になったことから、東京と地方の格差の問題があらためてクローズアップされる結果となった。東京は日本の中で唯一、政府から交付金を受けずに運営できる都道府県だが、地方を活性化するという観点から、これまで東京の税収の一部は地方に強制配分されてきた。昭和の時代までは、基本的に右肩上がりの経済だったのであまり問題視されることはなかったが、最近では東京都民から地方への強制配分は是正すべきとの声が高まっている。この動きがどうなるのかによって、東京に住んだ方が有利なのか、地方に住んだ方が有利なのか、状況が大きく変わってくる。富裕層にとっては非常に悩ましいところだ。

税金には大きく分けて国税と地方税があり、地方自治体が独自の財源として利用できるのは地方税だけとなっている。所得税や消費税など主要な税は国税となっているため(地方消費税は除く)、地方自治体は法人事業税や住民税、固定資産税など限られた財源を利用するしかないというのが実態だ。当然、地方税だけでは多くの自治体が歳入不足となることから、国は地方交付税交付金という形で財政支援を行っている。これに加えて、地方には多くの補助金が提供されており、地方自治体が自主的に財源を確保できる割合は、自治体によっても異なるが平均3割程度といわれる。俗に「3割自治」と呼ばれるのはこれが由来となっている。

逆に考えれば東京都は、もっと多くの税収を確保できるということであり、東京都民の一部から、こうした地方への強制配分をやめるよう求める声が上がっている。東京から地方への配分は以前から行われてことなのだが、近年、この傾向がさらに顕著となっているのは、税制改正によって東京の負担がより大きくなったからである。

政府は2008年度以降、複数回の税制改正を実施し、地方税収の一部が国税化した。税制改正以後、東京はすでに約1兆3000億円の税収を失っており、消費税10%への増税後はこの金額がさらに増える見込みとなっている。今回の都知事選が混乱した背景にはこの強制分配の問題がある。

もっとも地方に税収が奪われているとはいえ、東京は日本の中でも圧倒的な経済力があり、他の地域から富をかき集めているのは事実である。

加谷珪一

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