前回、ロンドンには世界の大富豪たちが集まっていることを紹介しましたが、こうした大富豪たちが各都市で必ずチェックをする超高級不動産が今回のテーマです。(ロンドンの初回から読む)
今回の視察では、Brexitでポンドが主要通貨に対して急落したため、日本やシンガポールのお客様からのリクエストで色々な物件を視察しました。
日本では東京であっても10億円を超える物件は珍しく、それ以上の価格帯でのセグメント分けは存在しませんが、世界中の大富豪が資金を投じるロンドンの不動産マーケットには超高級不動産の中にも様々なセグメントが存在します。
現在のロンドンで最も高額のコンドミニアムはOne Hyde Park(ワン・ハイド・パーク)で、高級ホテルやコンドミニアムが集まるナイツブリッジにあります。ロンドンを代表するホテルであるマンダリンオリエンタルに隣接していて地下の専用通路で結ばれ、このレジデンスに住む人はホテルのサービスを受けられます。1階には超高級スポーツカーのマクラーレンのショップや、アブダビの銀行の支店が入り、ロンドンの最高級コンドミニアムらしい佇まいです。
ワン・ハイド・パークの2,300㎡もあるペントハウスは、2011年にウクライナで最もリッチな大富豪であるリナト・アフメトフが約1.4億ポンド(約180億円)で購入して話題となりました。上層階のユニットからはその名のとおりハイドパークが見下ろせて最高の眺望です。ただ、今回の滞在中このコンドミニアムの前を何度も通りましたが、人が住んでいる気配はほとんどなく、1つだけ毎日バルコニーに大量の花により異なった飾りづけがされているユニットだけが目立っていました。アフメトフのような新興国の大富豪が、資産の保全手段として購入していて、住居としている人は少ないようです。
今回のコラムで紹介する他の超高級コンドミニアムも同様ですが、英国では居住していなければ地方自治体への固定資産税の支払いが免れられて、タックスヘイブンのペーパーカンパニーを通じて投資目的で所有するユニットが多いために、自治体に税金面での寄与がないと議会でも批判が起きています。ただ、税制が大幅に強化される可能性は低いでしょう。その理由は、こうした超高級不動産物件の開発のほとんどが新興国マネーにより主導されているからです。
上記のワン・ハイド・パークはカタールの王族が開発資金を提供していますし、現在のロンドンで最も目立つザ・シャードも同じくカタールマネーで建てられました。ザ・シャードは高さ300メートル以上のピラミッド型のビルで、他に同等の高さのビルがないため上層階からはロンドンの市街が全て見渡せます。
他にもバッキンガム宮殿に隣接した、宮殿を眼下に見下ろすバルコニーが供えられたペントハウスまである超高級コンドミニアムも注目されています。こちらは上記の2つのコンドミニアムと異なって建設中で、2017年完成を予定しています。まだコンドミニアムの名前が発表されていないので、住所からNo.1 Palace Street(ナンバーワン・パレス・ストリート)と呼ばれています。こちらには72ユニットが建設されて、ユニット数が多いため価格も500万ポンド(約6.6億円)~6,000万ポンド(約79億円)と幅が広くなっています。
こちらの物件はアブダビの王族が開発資金を出しています。コンドミニアムだけでなく、ロンドンを代表する高級デパートであるハロッズもカタールの王族が所有していますし、ロンドンのめぼしい資産は中東の王族たちに席巻されています。アブダビやカタールの王族は、莫大なオイルマネーを背景に数十兆円の資金を自分の意志で世界中に投じられる世界最大の投資家たちですが、そうした超VIP達が集中的に投資をするロンドンは、世界の中でも最も魅力的かつ安定したマーケットと評価されているのでしょう。