新型コロナウイルスの影響が深刻度を増している。経済的に成功を収めている人の中でも、今回の危機に際して冷静に対応できる人と、そうでない人に分かれている。事態に冷静に向き合える人は、どんな対処法を身につけているのだろうか。またこうした危機に対してはどのような準備が必要だろうか。
人は直近の記憶に縛られてしまう
危機管理の世界においては、危機というものは、常に違った顔を見せるというのが常識となっている。今回は感染症なので、感染防止策や経済活動の自粛要請への対処が重要なテーマとなっているが、あくまでもそれは今回に限った話である。
困ったことに人間というのは、近い記憶ばかりを重視し、遠い記憶は消し去ってしまう傾向が強い。例えば、東日本大震災ではは、津波によって多くの命が失われたことから、津波に対する対策ばかりに注目が集まったが、地震による被害というのは津波だけではない。
筆者は宮城県の出身だが、宮城県というのは地震の多発地帯で、以前から巨大地震の被害を何度も受けている。世の中では、多数の犠牲者が出ないと話題にもならないので、ほとんどの人が知らないと思うが、1978年にもマグニチュード7.5の巨大地震が発生している。筆者も体験したが、あまりに揺れの大きさに、建物の倒壊を覚悟した記憶がある。
この時は海底地震だったにもかかわらず、なぜか津波は発生せず、ブロック塀の下敷きになって子どもが犠牲になるなど、揺れによる被害が大きかった。3.11直後は津波のことばかりがクローズアップされたが、津波への対処が揺れへの対処と同じとは限らない。
今回のコロナショックは、当分の間、多くの人の記憶に残るはずであり、これからは感染症対策が重視されるのは間違いない。だが、次の危機が感染症とは限らないので、今回に対応できる体制が次の危機に対して有効である保証はない。
では、どのような危機にも対応できる危機管理術というのはどのようなものだろうか。これは「常に2つ以上の選択肢を持つこと」に尽きるだろう。