目先のお金に目がくらんで、それを優先してしまう人と、そうした誘惑には一切惑わされない人というのはくっきりと分かれてしまうものだ。これは性格の問題なので、仮に置かれている経済状況が同じだとしても、片方は目先のお金を優先し、もう片方はあまり関心を寄せない。
何かのビジネスや投資をスタートする時には、当然のことながら軍資金が必要なので、まずはお金が必要というのはその通りである。特にビジネスの場合、資金繰りというのは極めて重要であり、手元に一定の資金が確保されていないと、仕入れや販売、従業員への支払いなどができなくなるので、事業の継続が難しくなる。
だが、ここで言うところの目先のカネというのはそういった意味ではない。成功する確率は高いが、わずかな利益しか得られないプロジェクトと、ある程度のリスクはあるものの、大きなリターンが得られるプロジェクトのどちらを優先するのか。あるいは、新規事業への先行投資など、すぐには利益を得られないものに対して、お金を投じることができるのかという意味である。
さらに身近で分かりやすい例をあげれば、人材を集める必要に迫られた時、食事代などの交際費を、自腹で積極的に使えるのかといった話だ。
筆者がかつて起業する際、仲間を集めたくて、多くの知人に声をかけたことがあったが、こちらの用事で相手を呼び出すわけだから、支払いは自分がするのは当たり前だと思っていたし、それについて1ミリも疑問を持ったことはなかった。起業後、今度は知人から、ビジネスについていろいろと相談されるケースが増えたのだが、相手を呼び出しておいて、自分で支払いをしたがらない人というのが、結構な割合で存在することに気付いて驚いたことがある。
世間知らずだったと言われればそれまでだが、筆者は自分ではまったく頭に浮かばない概念だったので、そのような相手に何回も出くわすまで理解できなかったのである。
自分のプロジェクトへの先行投資であるにもかかわらず、そこにお金を出したくないというのは、その人の根本的な性格に由来するものであり、本人にとっては当たり前のことなのだ。そうだとすると、その人は、今後も同じ事を繰り返すだろう。
わざわざ、こんな話を引き合いに出したのは、根本的な性格の違いが、経済的成功を収められるのかのカギを握っているからである。
成功者の多くが、お金に執着していては成功できないと証言している。これは多くの成功者に共通する発言なので、ほぼ真実と考えてよい。多くのプロジェクトにおいて、一定金額の先行投資は必須であり、それに躊躇するようでは、成功する確率は大きく下がってしまう。
だが、先ほど例に取り上げたような、自身のお金を投じることができない性格だった場合、いくら、成功パターンを知識として仕入れても、決して実践することはできない。知識として仕入れた話と、自分の行動が有機的に結びついていないので、おそらく、知識と行動が矛盾していることにも気付かないだろう。
ここまではひどくないにしても、目先の利益にこだわりすぎて、大きなチャンスをモノにできないビジネスパーソンは多い。確かに目先の利益をしっかり稼ぐことは重要だし、そうした地道な努力を軽視する人に成功はやって来ない。だが一方で、目先の利益にばかりこだわっていては、それ以上、自身を成長させることもできなくなる。