ポイ探の菊地崇仁氏が、エンリッチ読者のライフスタイルにマッチするクレジットカード、あるいはポイントサービスの付加価値を見出す本連載。新年の特別編をお送りしているが、今回はポイントの新たな活用法を紹介する。(1/3から読む)ーー
ポイント投資サービスが拡大
顧客の誘導に使うケースも
昨年は、クレジットカードや共通ポイントを使った、投資のサービスも増えました。一般的に、日経平均株価が下がるなど、急な相場の変動があると証券口座の開設が増え、コロナ禍でも同様に動きがあったそうです。直近の給与減、老後の不安など先行き不透明な社会に不安を覚え、投資でカバーしたいと考える人も多いのかもしれません。投資に対する関心は高まり、それに呼応する形で、手軽に始められるポイント投資も注目されていると思います。
ザっと挙げるだけでもたくさんあり、Tポイントで株式投資ができる、SBIネオモバイル証券の「ネオモバ」、dポイントで株を買うSMBC日興証券の「日興フロッギー」、他にも楽天ポイント、Pontaポイントを使う投資など。百貨店のマルイやエポスカード事業を展開する丸井グループもエポスカードで積立投資ができる「tsumiki証券」を始めました。三井住友カードとSBI証券は昨年7月に個人向け資産運用サービスで業務提携を発表していて、今年に入りVポイントを活用する投資サービスを展開するようです。ポイント投資のトレンドは今年も続くと思います。
ポイントの新たな使い方も模索されています。
例えば、JR東日本は、今年春より1年間の期間限定で、Suica定期券利用者向けに時差通勤を応援するポイントサービスを始めます。これは、対象のSuica定期券をJRE POINTに登録・エントリーのうえ、平日朝に対象エリアの各駅にポイント還元対象の時間帯に入場~退場すると、ポイントが付与されるという物。ピーク時間帯より前なら1日15ポイント、後なら1日20ポイントが獲得できます。加えて、Suicaのチャージ残高で在来線の同一運賃区間を10回利用すると、運賃1回分、11回目以降も運賃10%相当のJRE POINTを付与するサービスも3月から始めます。
ドコモは昨年11月から、九州大学持続的共進化地域創成拠点と共同で、同大学伊都キャンパスの学生約1500人がモニターとなった研究を始めています。これは、キャンパス内の飲食店や小売店など、店舗内の混雑状況に応じて、買い物時に付与するdポイントの付与率を変動させるという内容です。店舗に来店、来店しそうな学生モニターに、テイクアウトや混雑時間帯を避けた来店でボーナスポイントを付与するメッセージを送り、三密回避の行動を促すのが狙いです。
これまで、ポイントは店舗への集約や購入に対する単純なインセンティブとして用いられていましたが、これらの取り組みでは、人の動きの誘導しているのが特徴です。
新型コロナで苦戦する全国の商店街では、デジタル地域通貨で集客を図る動きもあります。例えば、東京品川区の戸越銀座商店街では、昨年11月に同商店街のみで利用できるデジタル通貨の「戸越銀座ポイント」の導入に向けた実証実験を実施。事前に募集した100名のモニターが参加し、対象14店舗でスマホを使いポイントのチャージや決済を行いました。商店街で利用できるクーポン券や来店ポイントの付与などもあるようです。今後は本格的なスタートを検討しますが、利用範囲を商店街に限定することにより地域内で経済が回り、集客にも寄与することに。顧客に購買データを収集・活用して、新たな集客・販促にもつなげるそうです。
エリアを限定して使うデジタル地域通貨の活用は広がっていて、昨年11月には群馬県みなかみ町が「MINAKAMI HEART Pay」、12月には同県沼田市が「tengoo(てんぐー)」を発行していて、今年2月には東京都世田谷区でも「せたがやPay」が始まる予定です。デジタル通貨の場合は鋳造や印刷の手間・コストがかからず、データの収集・活用も容易になります。何より地域限定なのでエリアの内外からお金を集めやすくなり、消費に使ってもらえます。近年は仮想通貨をはじめとする、ブロックチェーン技術を使ったデジタル通貨の発行が相次いでいますが、こうした流れはローカルレベルでも広がっていくかもしれません。