ポイ探の菊地崇仁氏が、エンリッチ読者のライフスタイルにマッチするクレジットカード、あるいはポイントサービスの付加価値を見出す本連載。今月はキャッシュレス決済の現状について解説する。–––
エンリッチ読者の皆さん、ポイ探の菊地崇仁です。前回は年初ということで特別編をお送りしました。コロナ禍を受けたプラチナ・プレミアム系クレジットカード各社の対応やセキュリティ、目的に特化したカードの登場に触れました。なかでも、三井住友カードが発行を始めたポイント付与に特化した「プラチナプリファード」はユニークな1枚です。私もさっそく使ってみましたが、特約店の「プリファードストア」の存在は魅力的。あるサイトで使ったら、かなりのポイントが付与されました。これまでのプラチナカードの常識を覆すようなものは、これからも出てくると思いますから、その際は皆さんにも紹介します。
公共交通機関でタッチ決済が普及
交通系電子マネーのライバルになる?
前回は、JR東日本が時差通勤をした定期券利用者向けにポイントを付与するサービスを始めると述べました。これまで、JRE POINTはJR東日本系のサービスやクレジットカードを使ってためていたのが、乗車に対するインセンティブとして付与するのは、面白い試みだと思います。
電車では、乗車券のキャッシュレス決済といえば、SuicaやPASMOといった交通系電子マネーの独壇場です。ところが最近は、新たな手段が導入されつつあるようです。
例えば、クレジットカード各社が展開するコンタクトレス決済のうち、Visaによる「Visaのタッチ決済」。急速に普及していて、2019年9月末時点で決済対応カードの発行枚数は3230万枚と、前年同月比約2.3倍に成長。対応端末の数も前年9月末時点で前年同月比の3.2倍になっています。現在は、セブン-イレブンやイオンなどをはじめ、デパートやスーパー、ショッピングモール、飲食店などで使えるようになっています。
さらに同サービスは、昨年7月には茨城交通、9月には岩手県北バス、10月には福島交通、会津バス、11月には京都丹後鉄道で導入され、今春からは南海鉄道(大阪)(実証実験)や北都交通(北海道)でも利用できるようになります。ここでは、公共交通機関向けに特別な仕様になっていて、乗車前のゲートではカードが有効かどうかの簡易チェックを行い、乗車中に正式な有効性を確かめます。さらに、下車時に金額を確定させる処理を行う仕組みで、これによりスピーディな入場を実現するようです。これまで、イギリスやカナダ、オーストラリア、イタリア、シンガポール、アメリカでは導入実績があり、いよいよ日本にもという流れです。私はコンビニでタッチ決済を使ったことがありますが、電子マネーに比べると、やや遅いと感じる場面があります。果たして、日本の通勤ラッシュに耐えられるのかどうか不安な面もありますが、まずは乗降者数がそれより少ないエリアで試していくのだと思います。
一方、JR東日本はQRコードに対応した自動改札機の実証実験を行っていて、紙の乗車券、電子マネーに次ぐ、新たな乗車のあり方を模索しています。Suicaは交通のみならず、いまではコンビニなどでの買い物でも使う、重要な決済インフラのひとつ。タッチだけではなくQRコードも加えることで、さまざまなシーンに対応できるようになるでしょう。Visaのタッチ決済や、いまではコード決済の覇者になったPayPayに対抗したい気持ちがあるのかもしれません。
–––公共交通機関で交通系電子マネー以外が使えるようになると、複数のキャッシュレス決済を集約できるようになり、ポイントも集めやすくなるように。何かと便利かもしれない。次回は、行政サービスにおけるキャッシュレス決済の導入に触れよう。