ビジネスや投資で成功できる人とそうではない人は、くっきりと分かれてしまう。不思議なことに、事業で成功する人は投資でも成功しやすいという特徴が見られる。高校時代から株式投資に取り組み、起業する時にはすでに巨額の資産を持っていた日本電産創業者の永守重信氏などはその典型といってよい。
広い意味では投資もビジネスの一環なので、事業が得意な人は投資も得意というのは、それほどおかしな話ではないかもしれない。だが投資は独特の世界であり、ビジネス上のスキルと投資のスキルが一致するとは限らないというのもまた事実である。
では、投資で成功する人と事業で成功する人はなぜ一致しやすいのだろうか。筆者は物事に取り組む姿勢であると考えている。
基本的には試行錯誤がモノを言う
実際に起業してビジネスをしたことがある人ならよく分かると思うが、基本的に商売というのは、経験値がモノを言う。ごく一部の天才は、いきなり大成功できるのかもしれないが、たいていの起業家は、成功のウラで何十回もの失敗や試行錯誤を繰り返している。
何度も失敗を繰り返すことで、何となくビジネスのコツがつかめてくるので、後は、大きなチャンスが来たと思った時に思い切って勝負できるかどうかが、巨富を作れるのかどうかの別れ道になる。だが、ノウハウという点では、とにかく経験を積んだ方が圧倒的に有利だ。
起業で失敗する典型は、ビジネス書ばかり読んで、なかなか動かないタイプの人である。こうした人は、そもそもの動きが遅く、しかも、走りながら考えるということができないので、常に後手に回ってしまう。むやみに暴走するのはよくないが、とにかく動き出すという性格でなければ起業はうまくいかないだろう。
実は、投資においてもまったく同じメカニズムが成立する。
ビジネスと同様、投資というのも「習うより慣れろ」の世界であり、ごくわずかに存在している天才を除けば、場数を踏んだ人には絶対に勝てない。投資の世界においても、まずは自分でやってみて失敗を経験し、成功した人からコツを学び、スキルを上達させていくというのが成功への最短距離となる。
ところが現実にはこれとは正反対のことが行われている。
世の中は投資の指南本や解説本で溢れているが、こうした書籍を書いている人の結構な割合が自身では投資を行っていない。投資というのはビジネスと同様、勝ってナンボの世界であり、実地経験がない人の話は、純粋に学術的な話か情報収集という観点でもない限り、ほとんど意味はない。
これから野球を習おうという時に、野球のことは詳しいが、キャッチボールもしたことがない人に教えを請うことは通常、あり得ないはずだ。ピアノが上手くなりたいと考えている人が、ピアノには詳しいが弾いたことないという人からレッスンを受けようとは思わないだろう。だが投資の世界には、こうしたことが日常的に起きているのだ。