お金持ちは「品質の良いモノを長く使う」と言われる。この話は半分は正解だが、半分は都市伝説である。ではお金持ちは、モノに対してどのようなスタンスで臨んでいるのだろうか。
長く使って価値が出るモノとそうでないモノ
資産家が古いモノを大事に使うという話はよく見聞きする。だが、それは古いことに価値が見出せるものが中心となる。20歳の誕生日を迎えられる天皇皇后両陛下の長女・愛子さまが、両陛下に挨拶される際、ティアラは新調せず、黒田清子さんから借用することが大きな話題となった。コロナ禍で国民生活に大きな影響が出ていることが借用最大の理由だが、皇族ともなれば、むしろ古いアクセサリーの方が高い価値や評価をもたらすこともある。資産家の中にも、代々引き継ぐものを持っているという人は多い。
一方、洋服など消耗が激しいものはそうはいかない。現実問題として、着る回数が増えれば洋服は確実にくたびれてくるし、伝統的なものでもない限り、時間が経過するにつれてデザインは流行遅れになる。
所得が高い人は、基本的に消費の額も大きく、この理屈は服飾品にもあてはまると考えて良い。お金持ちは、消耗品については、無意味に長くは使わず、品質が良く高いものであっても一定期間しか使わないのが現実だ。その理由は第一印象に大きく影響するからである。
アクセサリーなど物理的に長持ちし、かつ、代々受け継がれることが高い価値をもたらす場合には、積極的に活用する一方、経年劣化が激しい消耗品については、惜しむことなく新品にお金を投じ、自身のイメージを維持する。この合理性こそがまさにお金持ちマインドである。
品質のよいモノを長く使うというのは、特定の分野に限られた話であり、お金持ちに対して「そうあって欲しい」という願望が作り上げた概念と考えてよいだろう。半分は都市伝説と述べたのはこうした理由からである。
ちなみに筆者の知人A氏は、靴にどれだけお金をかけられるのかが資産家としてのバロメーターになると話していた。服と同様、靴は消耗が激しい品物のひとつであり、しかも初対面で相手に与えるインパクトについては洋服ほどの効果がない。つまり靴というのはコストパフォーマンスが低いファッションということになる。
逆に言えば、コストパフォーマンスが低い靴に大金を投じられるというのは、資金に余裕がある証拠であり、確かに資産家としての格を決める大事なファクターとなるのかもしれない。相手のレベルは靴を見れば分かるという話はホテルマンなど接客に携わる職業人の間では常識だが、この話の信憑性は高い。