ポイ探の菊地崇仁氏が、エンリッチ読者のライフスタイルにマッチするクレジットカード、あるいはポイントサービスの付加価値を見出す本連載。12月最後は、2021年のクレジットカード市場を菊地氏が総括する。(1/3から読む)−−−
カードデザインのリニューアルが
進み個人情報の裏面化が進行
今年1年間のクレジットカードを取り巻く状況を振り返ると、非常に多かったのがセキュリティ対策を踏まえたカードデザインのリニューアルでした。これまでに、「三菱UFJカード」や「エポスカード」「アメリカン・エキスプレス・プラチナ・カード」「ダイナースクラブカード」で実施され、カードの表面から会員番号や氏名などの個人情報がなくなり、裏面に集約されました。12月にはJCBオリジナルシリーズも同様のリニューアルを実施し、JCBのタッチ決済も標準搭載するようになります。
一方、前回取り上げた三井住友カードのナンバーレス、カードレスのように、カード情報のほとんどを券面に記載しないクレジットカードも多く出回るようになりました。「SAISON CARD Digital」や「カードレスLINEクレカ」などがそうで、これらのカードはオンラインから申し込むと最短5分程度でカード番号が発行され、すぐに使い始められることができます。スマートフォンやアプリの普及により、クレジットカードが必ずしもプラスチックカードだけである必要がなくなってきたわけです。
プレミアム系のクレジットカードでは、メタルカードが増えました。これまでは先ほど挙げたアメックス・プラチナやラグジュアリーカードが有名でしたが、アメックスではゴールド・ビジネスカードが金属になり、ダイナース プレミアム カードもメタルになる見通しです。
なぜかというと、メタル仕様だとプレミアム感を演出しやすいからでしょう。近年は黒色やシルバーの一般カードが多く出回るようになり、ハイクラスのカードとあまり見分けがつきません。これを金属にすることで差別化を図るのが狙いです。ホルダーからしても、満足度が高まるに違いありません。ただし、金属カードはカードを飲み込むタイプの券売機などで使うと出てこないといったタラブルもあるようです。アメックス・プラチナはプラスチック製のセカンドカードを発行して使い分けを促していますが、みなさんも利用の際はご注意ください。
移動をすることでポイントや
マイルがたまるサービスも増加
近年は健康寿命を延ばす目的に、ウォーキングを促したり歩数などに応じて独自のポイントなどを付与する自治体が増えていますが、電車や飛行機、歩行など、日常の移動を付加価値に変えるサービスも今年は目立ちました。
例えば、2019年にアメリカで生まれ今年10月に日本に上陸した「Miles(マイルズ)」は、アプリをダウンロードして、GPSの使用を許可しておくと、スマートフォンのデータに基づいてAIが移動手段を判定し、世界中どこにいても1マイル(約1.6㎞)の移動に対して、アプリオリジナルのポイントである「マイル」を付与。たまったマイルは割引クーポンやギフトカードへの交換、抽選、寄付などに使うことができます。
同サービスが面白いのは、基準となる自動車の移動に対して、電車やバスを使うとマイルの付与は3倍、自転車は5倍、ランニングや徒歩だと10倍になるという点。ようするに、エコな手段を選ぶほどマイルはたまりやすくなり、反対にエコとはいいがたい飛行機を選ぶと0.1倍になります。実際に私も使ってきましたが、すぐさま3000マイル以上がたまりました。ただし、同じ大阪に行くのでも、登場や着陸後の手間や中心地への移動を考えるとあまり時間は変わらないのに飛行機と新幹線ではマイルの付与に大きな隔たりがあり、これも上手に使うテクニックが求められるようです。しかしながら、移動すると自動的にマイルがたまるので、ダウンロードしておいて損はありません。
似たようなサービスでは、ANAグループのANA Xが、徒歩や電車を含めたあらゆる移動でポイントを獲得することができる「ANA Pocket」の提供を12月から始めます。たまったポイントはデジタルギフト券やANA SKY コイン、ANAマイルに交換できるようで、ANAマイレージ会員は無料でANA SKY コインが当たる「ガチャ」を回すことができるなど、数々の特典も用意されているようです。
いずれにしても、スマートフォンを基軸に、ユニークなサービスは今後も出てきそうです。2022年以降も、付加価値の高い情報を引き続きお伝えするので、よろしくお願いいたします。