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The Style Concierge

シンプルな言い回しを好み、小難しい話を嫌う理由

kaya202201

お金持ちは難しい単語や言い回しを嫌うことが多い。それに対してお金に縁のない人は、どういうわけか難しい単語や言い回し、外来語が好きである。なぜ言葉の使い方にこのような違いが生じるのだろうか。

筆者が知る実業家は、ビジネスに関する表現が独特である。ネット通販大手の楽天については「ネット上で店舗の場所貸しをする不動産業」、ライバルのアマゾンについては「商品を仕入れて客に売る小売業」と明快に説明する。グーグルについては「広告代理店」といった具合である。

上記3つの説明は各社のビジネスモデルを端的に示しており、的確な表現といってよい。

ビジネスというのは、太古の昔から基本構造は変わっておらず、時代の変化に伴って使うツールや技術が変わっていくだけである。どれだけ斬新で画期的に見えるビジネスであっても、物事の本質が分かっていれば、単純化して説明することが可能である。逆に言えば、小学生でも分かるように説明できない場合、自分はそのビジネスについてよく理解していないと考えるべきだ。

成功者が小学生でも分かるような表現でビジネスについて語るのは、自身の理解力について自信があるからである。一方、自分に対して自信がない、あるいは自身が理解出来ていないことを理解できていない人は、やたらと難しい表現を好む。同時に外来のビジネス用語を多用する傾向も顕著である。

先日、外来語の多用問題がテレビ番組やネット記事で取り上げられていたが、アサインやフィックスという単語については、ぴったり来る日本語が存在しないので、使う人が多いことはまだ理解できる。だがエスカレ(上司に指示を求めること)というレベルになるとまったくもって意味不明である。

英語圏では上司に対する報告という意味でレポートするという表現はよく用いられるが、上司に対して指示を求めるという意味で、エスカレーションという単語が使われている場面を、筆者は見たことがない。英単語の意味はともかく、日本語として意味がまったく分からない単語を用いることの合理性はほぼゼロといってよいだろう。

仕事ができない人や成功していない人は、自分を大きく見せようという心理が無意識的に働き、物事をごく簡単に説明することを嫌う。このため意味が不明瞭になる外来語や小難しい表現を好んで使ってしまうのだ。矢継ぎ早に単語をペラペラと並べて得意満面で話をする人も、背景には基本的な理解の欠如や自信の無さがあると考えてよい。

加谷珪一

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