資産デザイン研究所代表の内藤忍氏が、各界のプロフェッショナルと投資談議に花を咲かせる、この企画。
今回は「2015年の投資戦略」と題した特別編をお届けしているが、第3回目は、海外不動産をテーマに話を進めていこう。
アメリカの不動産は、安定性で群を抜く
前回は日本の不動産投資について話しましたが、今回は海外に視点を移します。これまで本連載でも、様々なエリアを対象に対談を行ってきましたから、ある程度はご理解いただいているのではないでしょうか。
海外不動産の場合、投資対象は先進国と新興国に大別できます。そこで先進国といえば、欧州とアメリカなのですが、欧州は中央銀行が金融緩和に乗り出し、ユーロの先行きに不安があります。となると有力候補はおのずとアメリカに絞られます。
アメリカにも様々なエリアがありますが、日本人投資家にもっとも身近で、安心感があるのは、実はハワイだと考えています。利回りという点ではベストでは無いかもしれませんが、物件の価値が落ちにくく、バケーションレンタルやホテルプログラムなど、購入方法にもバリエーションがあるのは、大きなメリットです。
高いパフォーマンスを期待する投資家には、物足りないかもしれません。しかし、最終的には自分や家族が利用することも可能ですから、そんな出口戦略を考えている人には向いていると思います。同じアメリカでも利回りを重視するなら、テキサスなど、値上がりが出遅れているエリアを狙という選択肢もあるでしょう。
このような桁違い物件は、オイルマネーで潤った富裕層が、コレクターズアイテムのような感覚で購入しています。人気の物件ですから利回りも低く、管理コストを入れれば利回りはほとんどゼロ。一般の投資家には向かない物件です。
同じニューヨークに物件を持ちたいなら、セントラルエリアを離れることです。例えば、最近ではノースハーレムが新興エリアとして再開発されているので、投資対象としては注目されています。あるいは、マンハッタンから少し離れたエリアにも、将来性のある物件が眠っています。
利回りを追求するなら、新興国が対象になる
新興国はアジアが中心になります。リスクの判断基準は1人あたりのGDP。この値が高いほど国は経済的に豊かで、リスクが低くなる傾向があります(その分期待リターンも下がります)。ちなみに、マレーシアは1万ドル、タイが5000ドル、フィリピンは3000ドル、カンボジアは1000ドル前後です。
また、マレーシアは外国人投資家に対する規制があり、特定のエリアを除き、100万マレーリンギット以上の物件でないと買うことができず、日本円だと3000万円以上の投資資金が必要になります。また、バングラディシュのように、現地法人の設立が不可欠で、その法人を通じてしか物件を購入できないケースもあります。
スリランカも注目エリアですが、いかんせん物件数が少なく、本格的な投資物件の供給が始まるのはもう少し先のようです。
では、どこがこれからねらい目か?
タイは首都バンコクが海外不動産の投資先として有名です。ところが近年は人気の高まりとともに物件価格が高騰し、マレーシアに近く利回りは低下傾向にあります。利回りを求めて新興国を狙うという人にとっては、物足りないかもしれません。
タイで、高いパフォーマンスを求めるなら、パタヤやシラチャといった、首都以外のエリアもチェックしておきましょう。成長率、利回りともに目を見張るものがあり、ダイナミックな投資効果が期待できます。新興国といえば首都から投資するのが基本ですが、タイにおいては、そのセオリーから外れる時期を迎えているようです。
フィリピンは1人あたりGDPが3000ドルで、高度経済成長期の日本に似た環境。中間大衆消費層が伸びていて、離陸直前の飛行機をイメージしていただければと思います。
メリットは、場所によっては建築ラッシュにより供給過剰気味ですが、マニラやセブなど魅力的なエリアが豊富にあること。
他にも、マニラにはマカティ、グローバルシティ、オルティガスといった、これから面白いところもたくさんあります。フィリピン不動産は、マニラ、セブ、カジノエリアと、幅広いバリエーションから選べるので、物件探しに苦労はしないでしょう。対象も、ローカル向けの物件から、ハイクラスのホテルなど、さまざま。経済成長は7%、人口ピラミッドも理想的な形で、投資環境としては最も有望と言えます。
カンボジアは1人あたりGDPがまだ1000ドルで、伸びしろのある国家。人口が1600万人と少なく、物件もプノンペンに偏っています。物件が少ない分、選ぶのは簡単ですが、バリエーションに乏しいのが、マイナス要素といったところでしょうか。
カンボジアは米ドル投資ができるというメリットもあります。利回りも他のアジア新興国に比べると高い傾向があるので、ハイリスク・ハイリターンな投資を指向している人に向いています。
海外不動産には、ローリスクなアメリカからハイリスクのカンボジアというように、リスクリターンのバリエーションがあるということ。為替リスクも生じます。
しかし理解していただきたいのは、為替リスクを取らないリスクもあるということです。円資産に集中させるのではなく、海外の不動産などを活用して、外貨の比率を高めておくことで、円安リスクを回避しておくことも大切なことです。
海外資産をどれくらい持つか、それに応じて先進国か新興国のどちらにするかなど、自分自身が理想とする資産ポートフォリオをもとに、投資対象を決めていきましょう。
国内不動産とは異なる魅力を備える海外不動産。先進国で安定運用するもよし、新興国で高いリターンを狙うといった手法が想定できる。日本を含め、リスクとリターンを理解した上で、臨んでみることだ。
さて、次回は特別篇の最終回。内藤氏が選んだテーマは、「投資スキル」を磨く手段について。知識やノウハウを蓄えるには、どういった姿勢が求められるのだろうか?
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内藤 忍(ないとう しのぶ)
株式会社資産デザイン研究所代表取締役社長
一般社団法人海外資産運用教育協会代表理事
東京大学経済学部、MITスローン・スクール・オブ・マネジメント卒業(MBA)。
大学卒業後、住友信託銀行に入社。
1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。
その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。
2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。
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早稲田大学オープンカレッジ、丸の内朝大学などで講師を務め、雑誌、ネットでの連載コラムを担当。主な著書にシリーズ10万部を超えるベストセラーとなった「内藤忍の資産設計塾」シリーズ。「60歳までに1億円つくる術」「「好き」を極める仕事術」「丸の内朝大学マネーの教科書」「究極の海外不動産投資」など多数。最新刊は1月末に出版した「飲めて殖やせる 究極のワイン投資」。