国産ワインのブランド力を強化するための「ワイン法案」が与党内で検討されている。一定の基準を満たした国産ワインに対して国が品質を証明するというもので、モデルになっているのはフランスにおけるAOC(原産地呼称統制)である。果たして、日本ワインのブランド化は成功するのだろうか。
モデルになっているのはワイン大国フランスの制度
現在、日本にはワインの産地や品質の証明を行うための法律はない。関係者からは、海外に輸出するにあたってブランド力に欠けるとの指摘が出ているといわれる。
そこで検討されているのが、産地や品質を保証するための法制度である。ワイン好きの人にはお馴染みかもしれないが、ワイン大国フランスには、AOC(原産地呼称統制)と呼ばれる厳格な品質基準が存在している。ワイン法案はフランスの制度をモデルに検討が進められているという。
AOCはフランスの法律に基づいたものであり、産地やブドウの品種、醸造方法などが細かく規定され、これを満たしたワインだけが、そのブランド名を名乗れる仕組みになっている。
たとえばボルドー地方のワインでは5大シャトーが有名だが、その中のひとつである「シャトー・ラトゥール」はラベル(ワインの世界ではエチケットと呼ぶ)に、ワインの銘柄に加えて「PAUILLAC(ポイヤック)」と記載してある。
このポイヤックというのがAOCの名称であり、ワインの品質を国家が担保していることの証明である。フランスにはこうしたAOCがたくさん存在しており、各地域のワインのブランド力を高めるのに大きな役割を果たしている。
世界でもっとも高級なワインのひとつといわれる「ロマネ・コンティ」はブルゴーニュ地方のワインだが、この銘柄のAOCはワインの銘柄と同じである。つまり、ロマネ・コンティはロマネ・コンティ専用のAOCが認定されているわけである。
今や日本食は、完全にグローバル・スタンダードな存在となっており、ここにワインの日本版AOCが加われば、日本食と一緒に日本のワインをブランド化することも夢ではない。ただ、AOCを日本でも導入すれば、即座に日本ワインのブランド力が上がるのかというと、そう簡単にはいかない可能性が高い。なぜなら、最近では、こうした政府の認定よりも、市場メカニズムを通じたブランド構築の方が主流になってきているからである。