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正しいリスクの取り方

加谷珪一|連載 正しいリスクの取り方

大きな利益を得るためにはリスクを取る必要があるというのはよく知られた事実である。だが、むやみにリスクを取ればよいというものではない。正しいリスクの取り方をしないと、利益を得るどころか、ただ損をするだけで終わってしまう。

継続的に大きな利益を上げている人は、リスクの取り方が非常に上手い。逆に、損ばかりしている人は、本来なら取るべきでないところでリスクを取っていることが多い。

リスクのあるプロジェクトを目の前にした時、まず考えなければならないのは、取ったリスクに対して相応のリターンがあるのかという点である。そんなことは当たり前だと思った人もいるかもしれない。だが、この部分で判断を誤っている人が多いのが現実なのだ。

俺イタとソフトバンクに学ぶリスクの取り方

世の中には、リスクだけが高くてリターンが少ない案件というものがゴロゴロしている。これに引っかかってしまうと基本的に何をしても儲からない。例えば、超一等地にある物件で飲食店を開業するといったケースがその典型である。

知名度が極めて高いエリアでは、体力のある企業が採算を考えずに出店し、家賃が市場原理を超えて上昇していることがある。家賃が妥当な水準の1.5倍になっていたからといって、来客数が1.5倍や2倍になる保証はない。他に目的があれば話は別だが、このようなところで無理にリスクを取ってはいけないのである。

同じ飲食店なら、別なところでリスクを取る方が望ましい。行列ができる店として有名な「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」は、ブックオフ創業者である坂本孝氏が始めた事業なのだが、この両店はリスクの取り方に関する教科書のような存在であり、非常に学ぶべき点が多い。

俺のイタリアンと俺のフレンチは、高級店と同レベルの素材を使い、一流シェフが調理する料理が5000円で食べられるとあって、どの店舗も連日長蛇の列となっている。

高級店の食材と一流シェフの料理を低価格で提供すれば、お客が集まるのはある意味で当然なのだが、問題となるのは商品の原価である。通常レストランの原価率は3割程度だが、この両店の原価率は6割を超えている。これをどう利益に結びつけるのかについて、坂本氏がたどり着いた結論は、回転率の上昇であった。

加谷珪一

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