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経済的に豊かであることと、精神的に豊かであることは違うのか?

本当に大事なのは、将来の機会を確保すること

どちらが本当なのか、ここで断言することはできない。ただ、ひとつだけ指摘できる点があるとすると、経済的に豊かであれば、人には選択肢が生まれるということである。

不本意な仕事に直面した時、経済的な余裕があれば、最終的にそれを拒否するというオプションが生まれてくることになる。実際に、そのオプションを行使するのかどうかはともかく、選択肢が残されていることの意味は大きい。

今回の調査結果で日本人に自己防衛反応が働いているとしたら、それは何に対してだろうか?

おそらくそれは、生活水準の低下ではなく、将来の機会の喪失に対してであると考えられる。というのも、内閣府の調査における長期データでは、生活に対する満足度について、明確に低下傾向が見られたのは、バブル経済の余韻が残る1993年からの数年間だったからである。

経済的には豊かであったこの時期に、満足度が低下したのは、バブルの頂点を経験し「もうこれ以上の上昇は無理なのではないか?」と、将来に対して悲観した可能性が高い。やはり人間の満足度というものは、金銭的な部分よりも精神的な部分に大きく左右されるものなのかもしれない。

もし、そうだとするならば、経済的に豊かな人が、精神的な豊かさを享受できるメカニズムというのは、資産そのものではなく、資産を背景に得られる、将来に対する「豊富な機会」ということになるだろう。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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加谷珪一

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