日本は下方向に格差が拡大している
日本でも最近格差問題がよく議論されるようになってきたが、日本の状況はどうなっているのだろうか。
だが日本が平等な国なのかという決してそうではない。貧困層の割合という点でみると、日本の相対的貧困率は米国とほぼ同水準であり、国際的に見て極めて高い水準にある。しかも日本の相対的貧困率は年々上昇しているのが現実だ。米国はどちらかという上との格差だが、日本は下との格差ということになる。
日本が下方向への格差が拡大している原因ははっきりしている。日本経済がほとんど成長していないからである。この20年間で、日本を除く先進各国はGDPを1.5倍から2倍に拡大させてきたが、日本はほぼ横ばいとなっている。
経済がゼロ成長であっても、経済が国内だけで完結しているならば、それほど悪い影響をもたらすわけではない。だが、現代社会において、国内経済だけで物事が完結する分野などほとんどない。他の国のGDPが増大すれば、日本人が買えるモノやサービスの量や水準が低下していくのである。つまり日本は相対的に貧しくなっているのだ。
豊かさを示す代表的な指標である1人あたりのGDPにもその影響が出ている。かつて先進国ではトップだった日本の1人あたりGDPの順位はこのところ急落しており、2013年時点ではイタリアを除くすべての先進国に抜かれている。
富裕層が増加することによる格差拡大については、その是非について様々な見解がある。経済力があり、消費も旺盛な富裕層が増加した方が、最終的にお金の回りがよくなると主張する識者もいる。実際、米国は富裕層の活発な消費が、これまでの経済を牽引してきたという側面が強い。
一方、1人の人間が使う金額には限度があるので、富の過度な集中は経済の停滞を招くという意見もある。どちらが正しいのかは分からないが、間違いなくいえることは、富裕層が増加しているのであれば、そこから課税することや、富の再分配は容易ということである。
しかし日本のように富裕層が増えたのではなく、貧困層が増えた形での格差拡大はやっかいである。所得が低い層に再分配する原資を確保することが難しくなるからである。
日本はよく知られているように累進課税となっており、高額所得の人ほど税金が多い。年収2000万円の人は、状況によって異なるものの、おおよそ十数%の所得税がかかっているが、年収300万円の人は2%程度しか課税されない。年収600万円でも状況は大きく変わっておらず、日本では中間層以下は実質的に所得税が無税の状態にあるといってよい。
所得が低い層に富を再分配するためには、中間層の税率を上げ、広く薄く負担を募るしかないが、社会的なコンセンサスを得るのは難しいだろう。同じ格差問題といっても、米国と日本ではまるで状況が異なるのだ。