アマゾンは実は究極のテクノロジー企業
アマゾンは当初、本のネット通販起業としてスタートし、たちまち株式を上場。ベゾス氏は兆を超える資産の保有者となっている。アマゾンはその後、様々な商品を揃える総合ネット通販企業に成長し、いずれは世界最大の小売業であるウォルマートを超える存在になる可能性も出てきている。アマゾンのこうした躍進の背景となっているのが、同社が持つテクノロジ−である。
アマゾンはテクノロジ−をあまり全面に出してはいないが、同社のサービスをよく観察すると、随所にベゾス氏のテクノロジーへのこだわりが見られる。今では当たり前の存在になったが、購買履歴をもとにお勧め商品を表示するアマゾンのサービスの背後には、高度なデータベース・システムが存在している。アマゾンの優秀なリコメンド・システムは当初、開発者の間では相当な話題となった。
アマゾンは、近年、クラウド事業に進出し、すでに世界最大のクラウド企業に成長しているが、同社がクラウドに進出した理由は、自社の開発で巨大なITインフラの構築に迫られていたからである。自社で巨額のIT投資をするのであれば、それを外部にも開放してビジネスにしてしまおうという考えである。
1時間以内に注文商品を届けるという、プライムナウのサービスが実現できたのも、商品の売れ行きや在庫に関する高度な予測システムが存在しているからである。さらに言えば、ベゾス氏はこうしたテクノロジーを悪用ギリギリのラインまで活用することを躊躇しない。
アマゾンは、自社のサイト内で、売れ行きの良い商品をシステムで検知し、もしそれが自社で取り扱っていないものだった場合、迅速に自社製品を提供するという荒技も行っている。アマゾンのサイトで商品を販売してくれるパートナーを蹴落としかねない強引なやり方だが、ベゾス氏に迷いはないようである。
ベゾス氏には、利益のためにテクノロジ−をフル活用し、ビジネス・パートナーとも容赦なく競争するという冷酷な一面がある。これは良い意味でも悪い意味でも、アマゾンがテクノロジー中心主義の会社であることを如実に物語っている。
このようなドライで冷酷な面を見せる一方、ワシントン・ポストを買収し、言論の自由を守ろうとする姿勢を見せるなど彼の内面は複雑である。
口の悪い人は、ベゾス氏はアマゾンという通販プラットフォームを利用して、人の行動を丸裸にしたいという恐ろしい野望を持っていると批判している。快活に笑うベゾス氏と、冷酷なテクノロジー主義者のベゾス氏、そして新聞社にポンとお金を出すベゾス氏は、すべて同一人物である。
最終的に彼がどのような人物だったのかは、アマゾンがどのような企業に変貌するのかで明らかとなる。時代の流れは早いので、それまでに10年という時間はかからないだろう。
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