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ジョン・メイナード・ケインズ(経済学者、投資家)

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マクロ経済学の生みの親である世界的な経済学者ケインズ氏を富豪と呼べば、多くの人が驚くかもしれない。だが、ケインズ氏は経済学者としての活動の傍ら積極的に株式投資を行い、大成功を収めた個人投資家でもある。株式投資の世界には美人投票という言葉があるが、これはケインズ氏が編み出したものだ。

相場師でもあったケインズ

株式投資における「美人投票」というのは、株式投資で勝つための法則を美人投票に例えたものである。美人投票で勝つためには、自分が美人だと思う人に投票してはダメである。皆が美人と思う人に投票することが何よりも重要となる。これは株式投資でもまったく同じことが言える。

自分が有望と思う銘柄に投資するのではなく、皆が有望と思う銘柄に投資することこそが、投資で勝つための秘訣ということになる。

これはケインズ氏の名著である「雇用・利子および貨幣の一般理論」の中で実際にケインズが言及していることである。この本の中でケインズ氏は、金融市場において投資家がどのような行動を取るのかについて、美人投票に例えて説明している。

彼は、分かりやすい例として、投資の話を取り上げたものと思われるが、必ずしもそれだけが理由ではなさそうだ。ケインズ氏は現在の価値に換算すると億単位の金額を株式投資に投じていた相場師でもあった。美人投票の理屈は、投資家としての経験に裏打ちされたものといってよいだろう。

ケインズ氏はケンブリッジ大学を卒業する前後からすでに株式投資に入れ込んでいたので、かなりの投資好きとみてよい。株を始めた理由というのも、純粋にお金が欲しかったからという非常に即物的なものだ。金銭的動機というものが、必ずしも汚らわしいものではないことは、ケインズ氏の人生を見ればよく分かる。

その後、ケインズ氏は官僚として大蔵省に勤務したり、大学に戻ったりしているが、投資活動はずっと継続していた。一次は為替取引にも手を出し、破産寸前まで追い込まれているので、投機的な取引も行っていたようである。だが、一連の投資経験を通じ、最終的には、ある投資手法を確立していく。それは、将来性はあるものの、割安に放置されている銘柄を狙い、過度な分散投資をせず資金を集中投下するというものである。

これはまさに、今、投資家として世界の頂点に立っているウォーレン・バフェット氏の手法そのものといってよい。実際、バフェット氏はケインズ氏の投資について研究し、自身の投資の参考にしたともいわれる。

加谷珪一

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