建築デザイナーを選ぶ基準とは
建築家としてホテルや飲食店などの商業建築を建てる一方、個人住宅から大規模マンションまで幅広いデザインを行い、最近では海外からのオファーも多い西原研究所所長、太細通氏に建築家の選び方を尋ねてみた。「建築デザイナーとしての役目は施主のライフスタイルや自邸に対する夢をどれだけ把握できるかという能力が必要です。そして施主の希望を正確に再現するだけではなく、プラスアルファの喜びを与えられるようでなくてはダメだと思います。よりハイセンスなデザインを希望するならば、戸建の住居だけではなく、店舗などの商業系のデザインもこなせる人のほうがいいでしょうね」
「建築雑誌などで施工例を見て、自分の感覚でピンときたら、まずは相談に行ってみること。自分の話をちゃんと聞いてくれる人、コミュニケーション能力の高い人でないと結果的に自分の納得のいくものは出来ないですね。そして家具選びも出来るインテリアデザイナーの素養も必要です。建築関係の雑誌に多く取り上げられていれば、イコールいい建築家であるとは言い切れないけれど、参考にする作品は数多く見たほうがいいでしょう」
「断熱や防音、耐震などの最新工法を取り入れるのはもはや当たり前、これらは予算に大きく関わるものですが、どんな優先順位をつけて使用するかは施主側の意向によります。建築デザイナーは土地の状況や環境に合わせて必要なもの、そうでないものを判断できますので、相談しながら予算内でメリハリをつけることが可能です。デザイン料は工事費に対して10%~15%を考えておけばいいです」
「何人かにデザインをお願いしてコンペ形式にするのもありです。もしも出来るならば、土地選びの段階から相談できて、たとえ時間がかかっても自分のペースに合わせてデザインをやってくれるデザイナーを見つけましょう。実際にその建築家と会って相談をしてみて、車やファッションなど趣味の合う人で、自分の感性が近いと思われる人、コミュニケーションしやすい建築デザイナーであれば、自分も満足できる家のデザインが上がってきやすいと思います」
「建築家と住まい手のコラボレーションという思想も重要です。家は人生のさまざまなシーンを演出する舞台装置です。だから大切なのは、それぞれのライフスタイルから発想される空間そのものの構成や、土地が持つ良質な記憶を再生していくこと。建築家があつらえた、例えるならば、まだ何ものにも染まっていない真っ白いキャンパスのような家。そのオーダーメイドの空間で主役である住まい手自身が、それぞれの幸せな人生をゆっくり描き上げていって欲しいと考えています。」