日本の家は30年経つと資産価値がなくなるといわれている。日本人の多くはそれが当たり前だと思っているが、国際的に見ると、必ずしもその考えは正しくない。100年経過しても住宅の資産価値が減らない国はザラにあるのだ。
米国民にとって家は大事な商品
住宅の資産価値が最も担保されやすいのは、やはり米国と英国だろう。日本の住宅しか知らない人は、米国の住宅事情を知ると、その違いにちょっとしたショックを受けるかもしれない。
米国の家というのは、基本的にどれを見ても、内装や間取りがまったく同じである。米国人は個性的な人が多く、ライフスタイルも様々である。もちろん、ローワーミドルの家とアッパーミドルの家では、広さが違うし、調度品のランクも大きく異なっている。だが基本的な家の作りは全く同じなのである。
これは不動産に対する考え方が日本とは大きく異なっていることに由来している。米国では自宅の不動産が、国民にとって最大の投資対象となっており、賃貸に出したり、値上がり後に転売することが大前提になっているのである。
商品として販売したり賃貸することを考えれば、クセのある間取りや内装は好ましくない。米国人が新しい家具を買ったり、内装をリフォームする時にまず考えるのは、どうすれば販売価格が上がるかなのである(米国では家具込みで家を売るケースもある)。
どんなにライフスタイルが個性的でも、住宅だけは徹底して金太郎飴であり、まったくといってよいほど個性がない。この徹底ぶりは見事である。
米国人にとって家は大事な商品であり、30年で使えなくなるなど、あり得ないことなのである。したがって新築する際にもあまりコストをケチらないし、定期的に修繕を行うことが当たり前になっている。こうした習慣の違いによって、家の寿命が日本とは全く違うのである。
現地で不動産を見るとよく分かるが、日本ではおなじみの築年数という言葉を一切聞かない。米国や英国では築100年の家も当たり前のように賃貸や売りに出されており、築年数を気にする人はいないのである。むしろ、きちんと手入れされ、商品価値が維持されているかどうかに多くの人が関心を寄せている。