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アジア大学ランキングの結果をどう見るか?

エンリッチ 加谷珪一 コラム

イギリスの教育専門誌が発表したアジアの大学ランキングが話題となっている。日本の大学は東大を除くと軒並みランクを落とす一方、中国の大学の躍進が目立つ。最近は、教育環境が充実しているといった理由から、シンガポールなどに移住する富裕層も増えているが、こうした大学ランキングの結果は、国際的な教育事情のひとつの参考になるかもしれない。

東大以外は多くの大学でランキング低下

「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」は2015年6月10日、アジアの大学ランキングを発表した。このランキングは、研究環境や論文の引用回数など13項目でアジアの大学をランキングしたものだが、定量的な評価項目よりも、教育内容や研究内容に関する専門家による評価が大きなウェイトを占めている。つまり人による多面的な評価の結果と考えればよいだろう。

1位になったのは東京大学で3年連続の首位。2位はシンガポール国立大学、3位は香港大学だった。1位~3位までは前回と順位が同じだが、4位と5位に北京大学と清華大学が順位を上げてランク入りしているほか、100位以内に多くの大学がランク入りしており、中国の躍進が目立つ結果となった。

東京大学は何とか1位を守ったが、それ以外の日本の大学は軒並み順位を落としてしまった。京都大学は7位から9位に、東京工業大学は13位から15位に、大阪大学は15位から18位に、東北大学は16位から19位に下がっている。順位を上げたのは、早稲田大学(64位から59位に)、神戸大学(88位から81位に)、岡山大学(94位から88位)などごくわずかである。

文部科学省では、世界で戦える人材育成を念頭に、スーパーグローバル大学という制度の導入を開始しており、指定大学に重点的に予算配分を行い、教育環境を充実させる方針を打ち出している。

スーパーグローバル大学には、トップ型とそれに準じるグローバル牽引型の2種類があり、トップ型大学には、東京大学、京都大学、大阪大学、東北大学など旧帝国大学を中心とした国立大学と、早稲田、慶応など私立の有名校が選ばれている。グローバル牽引型には、千葉大学や岡山大学などの名前が並ぶ。

この取り組みはまだ始まったばかりなので、結論を出すのは早いが、首位の東大は別として、トップ校に選ばれた各大学は早稲田を除くと軒並み順位を落としている状況である。一方、順位を上げた3校のうちの1校はグローバル牽引型で、もう1校は指定対象外というのは少々皮肉な結果といえるだろう。

私立を含めて日本の大学は、税金あるいは、政府からの補助金がないと運営を維持することはできない。日本の財政は基本的に余裕がないので、無尽蔵に大学予算を増やせる環境にはない。今後はスーパーグローバル大学の中で、さらに選別と予算の重点配分が進む可能性がある。

加谷珪一

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