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アジア大学ランキングの結果をどう見るか?

日本市場は魅力が薄れてきているが・・・・

エンリッチ 加谷珪一 コラム

一方、アジアの大学は国策として大学教育を強化しているところも多く、教育・研究環境が充実している。2位のシンガポール国立大学などはその最たるものだろう。

相対的に順位が低下しつつあるものの、やはり日本の大学で教育を受けた方がよいのか、海外の大学がよいのかは非常に悩ましい問題である。

いわゆるグローバル・エリートとして、多国籍企業などで働き、日本を拠点とすることは特に考えないという人であれば、迷わず海外の大学に留学すればよいだろう。だが現実にこうした環境を望む人はそれほど多くはない。

国際的な教育は受けたいが、基本的な活動拠点は日本ということになると、微妙な状況となる。大学までは日本で教育を受け、MBAやロースクールといった大学院を海外でという選択肢も出てくるからである。

4年制の大学教育をどこの場所で受けるのかという点は実は非常に大事なポイントである。これは日本に限った問題ではなく、どの国民であっても、4年制の大学教育を受けた場所が、その人のホームになる可能性が高いからである。

筆者の知人の韓国人は、悩みに悩んだ末、息子を4年制大学の時点から米国のカーネギーメロン大学に留学させる決断を下した。彼にとってこの決断は、息子は基本的に米国で生活する人間になるということを意味している。教育環境だけでなく、ビジネス環境などあらゆる面を総合的に考えた末の決断だそうである。

確かにグローバル市場は無限に広がっており、閉塞感のある日本市場と比べるとチャンスに満ちあふれている。だがグローバル市場は、その国、固有の文化が関係しない分、完全にスペック重視のガチガチの学歴社会でもある。人物評価以前に、どの学位を持っているかで書類選考されてしまう世界だ。

縮小が続いているとはいえ、日本国内には、目の前に1億人という巨大マーケットが存在し、同一の言語やカルチャーが通用している。皮肉なことだが、経営学的に見れば、もっとも効率がよく参入を検討すべき市場は、やはり日本国内の市場ということになってしまう。これは労働市場という点でも同じである。

この構図は、縮小市場であることが分かっていながら、グローバル化を進められない日本企業の現状とよく似ているかもしれない。

加谷 珪一 (かや けいいち)

経済評論家。東北大学卒業後、投資ファンド運用会社などで企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任。マネーや経済に関するコラムなどの執筆を行う一方で、億単位の資産を運用する個人投資家の顔も持つ。著書「お金持ちの教科書」(阪急コミュニケーションズ)ほか多数。

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