背景にあるのは人口減少と拠点集約
こうした動きの背景にあるのは、おそらく高齢化と人口減少と考えられる。人口が減ってくると、利便性の高い場所に住居や店舗を集約した方が、効率がよくなってくる。地方では地方拠点都市への人口集約が、首都圏では東京都心への人口集約が発生している可能性が高い。
最近では、家電量販店や大型スーパーなど郊外立地が当たり前であった業態も、都市部への出店を強化している。イオンやニトリといった企業のこれからのターゲットはほとんどが都市部となっている。郊外型の店舗は今後、急速に数を減らしていくことになるだろう。
企業の経営者は、こうしたお金の動きに敏感である。また、それなりの経済力を持っているので、投資余力も大きい。他の人に先駆けて行動を開始している可能性が高く、その結果が、成城や田園調布のランキングの低下となってあらわれているわけだ。
一方、これとは逆の動きも見られる。経営者に限定せず、すべての人を対象とした転出入の結果を見ると、違った動きになっている。2014年における東京都区部の転出入は転入超過となっており、基本的に人は増えているのだが、60歳以上の高齢者に限って言えば、逆に転出超過となっている。
転出先は、遠方ではなく千葉県や埼玉県など近隣の県である。これには高齢化と介護の問題が背景にあると考えられている。都心部では、経済的理由で高齢者向け施設に入れず、高齢化に伴って郊外に転居している可能性が高いのだ。
今年6月、元総務大臣の増田寛也氏を座長とする民間有識者団体が、首都圏における介護施設の不足を解消することや地方創生の観点から、首都圏から地方に積極的に高齢者を移住させる必要があるとの提言をまとめた。一部からは、地方を高齢者の姥捨て山にするのかと批判が出ているが、政府はこの政策を進める意向のようである。
大きな流れとしては、人口は大都市に集約する傾向にあり、経済力に応じて、大都市圏の中で、中心地なのか郊外なのかという二極化が起ころうとしているのかもしれない。