最近、若い人達の間でも、自身や親の老後に備える動きが活発になってきている。ポイントとなるのは不動産である。お金に対するセンスがある人は、親の介護という問題でさえも投資機会に変えてしまうのだ。日本において高齢化の流れを食い止めることはできないが、うまく対応すれば、有力な資産形成の手段にもなるだろう。
介護の問題は実は距離の問題
ここ数年、不動産業界では都市部のタワーマンションの販売が好調だった。高級物件が飛ぶように売れていたのは、高層階の場合相続税が有利になるという、いわゆるタワマン税制があったことや、中国人など外国人投資家が投資目的で積極的に購入していたからである。
タワマン税制は国税庁の方針展開で事実上消滅してしまったし、中国人による爆買いも一時期に比べれば勢いが鈍っている。超高級物件の販売はそろそろピークを迎えているとの見方も出てきている。だが、都市部の物件に対する全体的なニーズは弱まっていない。背景にあるのは、郊外からの移住という実需である。
高齢化に伴い、郊外の一戸建てを処分して、都市部のマンションに住み替えるというケースは、かなり以前から目立つようになっていたが、最近ではその動きがさらに活発になっている。
以前は、資金に余裕のある富裕層が中心だったが、最近では中間層でも同じようなパターンで都市部に住み替えるケースを目にするようになった。また、高齢者の夫婦が独自に行動するのではなく、子供夫婦が積極的にこうした住み替えに関与している。
こうした動きは、ひとつの投資機会として捉えることが可能かもしれない。
高齢者の割合は年々増加しており、多くの人が、親の病気や介護の問題に直面する状況となっている。ここでネックとなるのが親が住む場所と子供が住む場所の距離である。
子供が都市部に、親が地方に住んでいた場合、親が病気になったり、介護がスタートすると、物理的な距離というのが大きなカベとして立ちはだかる。東京都知事の舛添要一氏は、遠隔地に住む親の介護を経験しているが、介護費用そのものよりも、むしろ移動にかかる交通費とその時間が大きな負担になったという。
舛添氏の場合、実家が九州ということもあり、1回の往復だけで数万円かかっていたはずである。週1回、4万円の往復を5年間続けた場合には、交通費だけで1000万円になってしまう。実際、舛添氏はこれに近い出費だったようである。介護などによる帰省の場合には、好きなタイミングでは交通機関に乗れないので、割安な運賃の恩恵を受けられないケースも多いと考えた方がよい。