高齢者向けの物件は基準が全く異なる
こうした状況を総合的に考えると、親子が近いところに住んでいる方が効率がよいことは間違いない。このような事情を背景に、郊外の戸建てを処分して、都市部にマンションを購入するケースが増えているのだ。
今は、マンションを購入できる一部の人だけの動きだが、今後は賃貸住宅の居住者でも、高齢化に伴って都市部に移動するケースが増えてくると考えられる。こうした物件を取得しておけば、自分の親を住まわせ、その後は、賃貸物件として活用することができる。賃貸に回さない場合でも、高齢者の住み替えに最適な物件であれば、その後の売却も容易だろう。つまり親の高齢化対策はやり方によっては非常に有益な投資になるのだ。
高齢者が住むことを考えた場合、物件の選択基準も変わってくる。一般的なマンションの投資では、築年は新しい方がよい。だが高齢者に対象を絞るのでれば、必ずしもそうとはいえなくなってくる。
高齢者にとってもっとも重要なのは、アクセスの容易さである。病院が近くにあり、コンビニやスーパーが充実している物件の快適さは、高齢者にとっては何にも代え難いものがある。こうした条件を満たした物件は、築年が古くても十分なニーズを維持できる可能性がある。
これに加えて、マンション全体の作りも重要である。廊下やゴミ出しスペース、エントランスに余裕があり、段差が少ない物件は、実は非常に付加価値が高い。介護施設のクルマが停車しやすく、住民が車いすでもラクに移動ができるからである。
またこうした物件には高齢者が集まりやすく、さらに相乗効果を発揮する。管理人や住人が高齢者の扱いに慣れることで、マンションに出入りする介護施設の職員もスムーズに仕事ができる。
高級物件を除くと、こうした条件を備えた物件は、実は非常に少ない。特に新築のマンションは条件の悪いところに無理をして建てていることが多いので、こうしたスペースが犠牲になってしまうのだ。公共スペースに余裕のある建物は、新築ではなく古い物件に多い。
人口減少によって不動産の絶対数は確実に余ってくる。今後はこうした特徴を備えた物件など、工夫が必要な時代である。自分の親の老後対策と投資をセットにできるのであれば、一石二鳥な投資である。