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学歴はどれほど関係するのか?

そもそも学歴って何だ

ふだん私たちは何も考えず「学歴」という言葉を使っているが、そもそも学歴が何を意味しているのか考えたことがある人は少ない。

学歴が何を意味しているのかについては、二通りの解釈があるといわれている。ひとつはこれまでに身につけたスキルの証明という意味。もうひとつは、現在のスキルではなく、将来のポテンシャルを証明するという意味である。

日本以外の諸外国では、学歴は身につけたスキルを証明するものと見なされているケースが圧倒的に多い。例えば統計学を勉強した人は統計の専門知識があると見なされ、統計の専門家として、相応の対価で就職することができる。だが日本では、学校で勉強してきたことは、直接就職には関係しないことが多い。

少し言い方を変えてみよう。東大を出て新卒で入社した人と、入社7年目で仕事が抜群に出来る高卒の社員がいたとしよう。どちらが将来の社長候補といわれているだろうか?日本の会社ではほとんどが前者となっているはずである。

つまり日本では学歴はスキルの証明ではなく、将来、高い能力を発揮することを約束してくれる保証として理解されている。したがって、学歴はないが、今現在、抜群の実績を上げている人よりも、実績は分からないが、学歴が高い人の方がリーダーにふさわしいと見なされる。

日本では学歴があれば、将来高い能力を発揮するだろうと皆が考えている。つまり、未来についてある程度予測できると皆が考えていると解釈することができる。誰が成功するのかは、やってみなければ分からないという考え方は採用されにくいのだ。

この考え方は果たして本当だろうか?

将来を予測することが可能ですか?と聞けば、ほとんどの人が不可能だと回答するはずである。だが、人材の選抜は現に、将来が予測できることを前提に行っている。しかも、本人たちはその矛盾に気が付いていない。この状態について疑問を持たない人は、少々厳しい言い方をすれば、論理的な人ではないのだ。

最近では想定外という言葉はもはやキーワードになってしまっているが、人間の想像力などたかが知れている。将来のことを完全に予測することなど不可能である。論理的にシナリオを考え、間違っていた場合には、即座に修正する。こうした柔軟な行動が取れなければ、変化の激しい時代を生き抜くことはできない。

学業さえできれば、将来が予測できると無意識的に考えてしまっているようでは、やはり大きなお金を作るのは難しいのではないだろうか?学業成績と資産形成が必ずしも一致しないのは、このあたりに原因がありそうだ。

加谷珪一

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