演繹法と帰納法
やってみなければ分からないという考え方が徹底されていないと、思考回路は総じて受け身になる。受け身の思考回路からは新しい価値観は生まれにくい。
人間が何かを考えて問題を解決する場合には、二つの方向からの進め方があるとされている。ひとつは「演繹(えんえき)法」、もう一つは「帰納(きのう)法」である。
演繹法とは、大きな前提から個別の事柄を推定していく考え方である。これに対して帰納法は、個々の事象から全体を推定していく考え方である。あまり意識をしていなくても、人は、たいがい、どちらかの方法を用いている。
学校の勉強は、問題を解くことに主眼があるため、解けない問題は出されない。このため、きれいな答が用意されていて、その答を探せば良いというタイプのものと相性がよい。上記でいけば、ウラに綺麗な法則がある帰納法を使った問題が学校で扱いやすいのだ。つまり、帰納法はどちらかという受け身の発想法であり、学校秀才タイプの人は、帰納法が得意なことが多い。
だが、帰納法から得られる結論は極めて当たり前で、つまらないものになることがほとんどである。投資であれ、事業であれ、皆が納得するような常識的なものは、すでに誰かが手をつけている。それゆえに、お金持ちになるためには、演繹法が大事になる。
ちなみに世界的な投資家であるジョージ・ソロス氏は、帰納法をとことん否定した哲学者カール・ポパーの信者でもあった。
もちろん、演繹法ばかりやっていてもダメである。ひとりよがりのアイデアで演繹しても意味がないからである。本当に賢いお金持ちは、最初は演繹法で考え、行き詰ると今度は帰納法に戻り、また演繹を行う、といった具合に演繹法と帰納法をうまく組み合わせているのだ。
*この記事は2015年5月に掲載されたものです
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