軍隊では結果がすべて
まったく分野は違うが、運がとても大事で、結果が出なかった時に言い訳が通用しないとう点で、お金儲けと戦争はよく似ている。
戦争にまつわる格言に「敗軍の将、兵を語らず」というものがある。「敗軍の将」つまり負けた方の指揮官(リーダー)は「兵について語ってはいけない」という意味である。
兵を語るというのは、負けた理由を兵隊(部下)のせいにして、兵隊の数が足りなかったから負けたとか、兵隊の能力が十分でなかったから負けたといった言い訳をすることを指す。つまり、リーダーは、兵隊の能力や補給などすべての面を事前に理解して戦いに臨んだのであり、負けたとしたらそれは100%指揮官のせいであるということだ。
お金の場合には最悪無一文になるか破産するだけだが、戦争の場合には命がかかっている。だが戦場では努力だけではどうにもならないことも多い。こうした中で、どのような人をリーダーに据えるべきなのか?この点においてアメリカ人の考え方は非常に面白い。
アメリカの海軍において、戦時における空母や巡洋艦の艦長の選抜基準は明確だという。それは「理由の如何を問わず、今まで船を沈めたことがない人」だそうである(アメリカ軍も普段は結構年功序列だったりするのだが、いざ戦争になると、モードが突然変わる)。「理由の如何を問わず」というところが非常に特徴的だ。
艦長として能力が高く統率力があるのはもちろんなのだが、事故や偶然のトラブルも含めて船を沈めたことがない人というところが重要なのである。
アメリカ人は基本的に将来のことを完全に予測するのは不可能と考えている。予測してその通りにものごとが進むほど世の中は甘くないという認識だ。だからこそ、リーダーには能力があるのはもちろんのこと「運」が良いことを極めて重視する。つまり世界観が厳しいのだ。先ほどの実業家氏にも通じる話である。